第48話 劇的対立をつくれ。読者の見切りの早さは今に始まったことではない。アメリカ探偵作家クラブの金言

 前回のエッセイを書いた結果、Xのタイムラインに、


「Netflix発のBL系作品が流れてくる」


 という悲劇が起きた昨今、皆さんいかがお過ごしでしょう。私は苦笑いを浮かべつつ「マーケティングがいい加減過ぎる」と、そのプロモーションを拒否しましたが、まあ仕方ありません。AIの進化に期待しましょう(笑)


 さて本題。結論から入ります。


・劇的対立をつくれ

・読者の見切りの早さは2000年代以前から指摘されている

・テンプレが優秀なのは、これが理由


 こんな感じになります。ではいきましょう。


□アメリカ探偵作家クラブの金言

「ミステリーのつくり方」という、小説指南本を随分前に購入したのですが、そこに記されていたのがこの台詞。


「劇的対立をつくれ」


 というものです。しかも出来るだけ早く。理由は明白で「最近の読者は見切りが早くなった」というものでした。なるほど確かに純文、文芸作品でもない限り読者は物語を求めているのであって「美文、文章芸術を求めているわけではない」

 劇的対立という構図は分かりやすく、本書には今で言う「ざまあ系」についても触れられており、改めて感心してしまいました。


 ざまあ系悪役令嬢追放系は、言ってしまえば報復もの。言い換えれば復讐の物語。読者をスカッとさせる、そんな作品を指すものでしょう。昨今で言えばやはり「半沢直樹」が分かりやすいでしょうか。


 そのざまあ、報復、復讐系に記号としてあてがわれたのが「悪役令嬢」であり「その他追放系」となるわけですね。

「ライトな復讐物語」それがざまあ系の位置付けなのかもしれません。


□1976年に指摘されていた「見せ場を早くつくれ。読者の見切りが早くなった」という事実

 2000年以前となると、今から約四半世紀前。まだインターネット全盛とは言い切れず、当然スマホも存在しません。

 ところがこの「ミステリーのつくり方」の発行は1976年にまで遡ります。その時点で既に「最近の読者は見切りが早い」と、指摘されているのです。驚くべき事実ではありますが、映像という選択肢が生まれた以上、往時に比べ書籍の立ち位置は厳しいものになったのでしょう。

 では今はどうか。ライトユーザーは「そもそも読まれない」という現実に直面しつつ、それでも人気作品が数多あることは知っている。そして何より、


「作家業一本では食っていけない」


 という話は皆さん一度は目にしたことがあると思います。昭和ならいざ知らず、今作家業のみで身を立てている方はどれぐらいいるのでしょう。「出版不況」というワードも以前よく耳にしましたが、最近は聞きませんね。


 と話が逸れましたが、読者の見切りの早さは今に始まった話ではない。だからテンプレ作品が強いのです。「追放!」と早い段階で記されていれば「ああ、ざまあ系復讐系」とすぐ理解してもらえる。

 後はどう物語を展開していくかになりますが、以前記した通り「以下自由演技」ですね(笑)


□物語の提示と展開

 読む系企画をやっていると「最低二万文字or五話は読みたい」と思ったりします。でないとまともな評価も感想も、ネタレビューも書けやしない(笑)

 とまあ私ですら「展開が遅いな……物語の要点をさっさと提示してくれ」と思うことが多々ある。「合う合わない。分かる分からない」はともかく、どんな作品なのか「興味」を持ってもらわないことには、スタートラインに立てません。

 言い換えると「刺さる、刺さらない」って奴になります。


 私も冒頭に山場を持ってこれず長々と書いて失敗したことはあります。短編を書くと盛り上げ方に限らずオチ、締め方も含め学べたりしますが、とにかく、


「早くどういう物語なのか読者に提示する」

「興味を惹かなきゃ話にならない」


 これが大切だと思うのです。

 純文学系や既に地位を確立している作家ならいざ知らず、海のものとも山のものとも分からない我々に出来る、読者への最低限の努力ではないかと、そういう話ですね。


□締めに、とはいえ例外がある

「序盤から劇的対立を演出して山場持ってこい」


 と言われると「そんな分かりやすい作品書きたくない」と仰る方いるやもしれません。気持ちは分かりますが、だったら覚悟しなければならない。

 一体どれだけの作品がWeb上にあるとお思いか。というか、これを実行したところで跳ねるとは限らない(笑)

 こういう当たり前の演出を実行しつつ、作品をつくり続ける。我々に出来る最低限の努力ではないかと、そう思うわけです。


 他方、スコア一桁でプロデビューという方もいます。いわゆる見つかってない系って奴ですね。また、非公開系の公募もありますから絶対ではない。

 序盤の劇的対立を実行したところで「刺さらない、技術がなければ意味がない」かもしれないですし。


「テンプレ流行りお約束」がなぜ重宝されるかは、そこにはエッセンスが含まれており、そして何より「分かりやすい」からなんです。

 だからみんな「テンプレ大喜利大会」に参加するんですよ(笑)


 とまあ、ちょっとした技術論を過去から掘り出し紹介させていただきました。前から書きたかったんですよね。やっと書けた(笑)

 皆さんの参考になれば幸い。ではまた。


・ちなみにこの技法小説に限らずマンガ、映像作品でも多数見受けられます。演出の基本みたいになってんでしょうね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る