第10話 助けられた者の重圧

 前北根山下山中に起こった滑落事故。僕は滑落した僧侶を助けようとしたが、周りの僧侶たちに「ここで助けてしまったら教えに違反して今度こそ咎めらるぞ!」とかなりきつく言われたが僕は「困っている仲間を見捨てることは出来ない。もしそれが教えに反していかなる処分を受けたとしても私は後悔は絶対にしない。」と反論して私は滑落した僧侶の元へ向かった。止めた人たちは下山を再開して麓の寺へと去っていった。氷のように冷たい木の幹をつかみながらゆっくりと滑落へと降りていった。

20分ほどして滑落現場に辿りついた。滑落した人は小柄な方で「寒い、痛い、痛い」と言いながら左手を抱えていた。僕は「もう大丈夫です。安心してください。」と励ました。「助けていただきありがとうございます。」とお礼を言われた。初めて近くで声を聞い時どこか妹の来津枝の友達の声に似ていると思った。私は応急処置を行い滑落した人を背負いながら麓まで下りた。北根寺に戻った時はすでに薄暗くなっており門には水郷先輩が僕を待っていた。水郷先輩はうれしそうな様子で「古祖、お前無事だったか。良かったよ。事故があったとも聞いたしさぁ。まぁいろいろ聞きたいことあるけど中に入って。」僕たち2人は水郷さんと共にお堂の中に入った。

 お堂の中に入ると「ありがとうございます。そしてお久しぶりです良成さん。」と助けた僧が袈裟をはずしながらお礼をした。「もしかして、茉奈さん?」と声をかけると「そうです。お久しぶりですね古祖さん。」北根寺は男性しか出家できないと考えていたため、助けた人が女性であったことに驚いた。しかもそれが妹の友人であったとは、すごい偶然もあるのだと感じた。水郷先輩は「古祖、お礼は言ってもらえたか?お礼言ってもらえたら、毛杉さんがお呼びだから2人で本堂に行くといい。ただ、今回は教えに反した行動になるからな。いかなる処分も覚悟しておくといいぞ」私は2人で本堂に向かうことになった。本堂に向かう途中、茉奈が「そういえば来津枝ちゃんは元気にしてるの?」と言われて、「うん、来津枝は元茎島の学校に行ったんだよね。手紙のやりとり少し行っているけど、読んでみると元茎島って本当にすごい所だよね。さすが、木恩国の中心って感じ。」

「茉奈ちゃんは元気にしてた?」 

「うん、あたしは元気だったよ。だけど、ここ1か月半くらいお父さんとお母さんにあっていないんだよね。あと、このお寺は女の子少ないしあと修行が厳しいかな。今日も滑落しちゃったし。」

「まあそうだよね。ここのお寺で女の子見たのは茉奈ちゃんが初めてだもんな。まあ、僕で良かったらいつでも相談に乗るよ。」

「古祖さんありがとうございます。」

「さあ、覚悟はいい?本堂に入るぞ」

続く

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私たちが残すべき記憶(過去編) 箕宝郷 @azumatomoki

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