第9話 神皇の登場
皇太子一行は樅川陣屋から元茎島の皇宅への帰路の途中。榎那王子は杉志皇太子に不満そうに言った。
「父上、あの椰子という人の態度が私には受け入れられません。どうしてあの人は父上にそんな態度をとる事ができるのですか?」
「それには理由があるのだ。ただ榎那にはまだ教えられん。いずれ時が経てば分かる事だからな。」
「父上、理由があるのはわかりました。しかし、私は納得できません。」
「榎那よそう言ってくれるのはありがたい。だが、世の中には感情だけではどうにもならない事もある。それを理解してくれ。」
「父上、わかりました。それにしても姉上は勝手にいなくなった事に対して少しも反省していない様子だけど。」
「急に矛先を私に向けるなんて榎那ひどいよ。私だって反省してるよ。」
「姉上、本当ですか?反省してるのであれば、昨日持っていた袈裟は持ち主の元へ返したのですね?」
「うう、まだ返せていないのよ。だけど、返す時が来たら綺麗な状態で返せるように保管してるわ。」
「はぁ、どうしようもないな姉上は。普通すぐに返さなきゃダメでしょ。なんでそう変な事するわけ?」
「すぐに返してしまうともう、彼との関係が終わってしまいそうで怖いのです。だから私はすぐに返したくないの。」
「姉上、その理解できない言い訳をしても許されるわけではない。むしろ我々神皇一族の評判を落としてるだけなんだよ。その世間を気にするとかと言う感覚姉上にはないの?」
「ごめん榎那、そういう事じゃないの。その彼とは助けてもらった時間しか接していないけど誠実で、気遣いのできる方だった。私がこの袈裟を持っているのがその全てを物語ってると思うの。そして返し忘れても私達に連絡来ないという事は多分返さなくてもいいという事だと思います。」
「姉上あのなー。私たちの立場を知ったら連絡しづらくなるだろ姉上は本当にそういう所どん...」
「柊時、榎那。もういい。そろそろ飛行場に到着するぞ!」
「はい皇太子様騒がしくして申し訳ないです。」
「まぁよい。飛行機にのるぞ。」
「さぁ御一行様、飛行機にお乗りください。」
こうして皇太子一行は飛行機に乗った。
「皆さん、大雪の中無事で何よりです。今日は通常通り飛行できますが、しばらく利用していない空港のため、路面状況があまりよくない事。天候が悪く揺れがひどくなる恐れがありますのでご了承ください。」
その頃、皇宅では神皇が到着の連絡を待っていた。
「楠刃神皇様。杉志皇太子御一行様無事に飛行機に乗られたようです。」
「あぁ、それなら良かった。杉志のやつ、樅川に失礼な態度とっていないだろうな。」
「はい、多分大丈夫だと思います。」
そうして、楠刃神皇は樅川藩に失礼な態度をとっていないか心配しているのであった。
続く
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます