第8話 冷たい視線

水郷「えぇ、お咎めなしとは本当か古祖。ルールを破ると容赦しないあの毛杉さんがそんな事するとは思えんが、もしかして、少女は毛杉さんの隠し子とかだったりして。」

古祖 「いや、さすがにそれは無いと思いますよ。」

葉鹿「いや、なにかがおかしい。助けた少女が例え毛杉の隠し子と言うのは冗談である。それでなくとも、古祖殿が少女を助けた行為は普段のお勤めよりも優先すべきことであったという事。古祖殿が、毛杉代表僧となにを話したのか今一度教えてくれないか?」

 僕は毛杉代表僧と行った会話を水郷と葉鹿2人の先輩僧侶に話をした。

水郷「なるほど。一応聞き取りは行ったのか。でも、不思議だよな。お咎めなしになったことは古祖自身で周りの僧侶達に説明しろだなんてさぁ。」

葉鹿「いや、俺は毛杉さんらしいなぁ~と思うがな」

水郷、古祖 「えっどういう事ですか?」

葉鹿「あっ、もうこんな時間だ。古祖そなたは登山の時間だぞ、今日は雪が降っているから気を付けてろよ。昼食の準備の時間だ。いくぞ。」

水郷(ちっ、またあいつ逃げやがって)

 僕は、若手僧侶達と前北根登山を行った。今日は雪がかなり降っていてとても滑りやすい。標高が上がるに連れて寒さは厳しさを増していき、無事山頂まで辿り着けるのか不安であった。

「寒い。本と今日は登山したく無かったな。」


「あぁ。下山したら、風邪引いてるわ。」

弱音を吐く若手僧侶もいた。僕は「皆、今日を乗り切ればきっといいことがあるよ。」と励ましたが、「あいつ、仕事さぼった奴じゃね。」


「あぁ、そうだよ。俺今日あいつのせいで寝坊して先輩に怒られたんだよな。」


「しかも、あいつさぁ代表僧侶に気に入られているのか分からないけど、お咎めなしなんだよマジふざけてね?」


「それはふざけているな。だから、あんなに偉そうにしていられるのね。」


との会話を私は、横耳で聞いていた。私は仕事をサボってしまったが、人助けよりも毎日の仕事はそんなに重要なのか?と考えるようになった。

そうこうしているうちに山頂に到着した。まだ9月だというのに吹雪いており、雪はひざ下まで積もっている。(今日はふもとの町が見えないから、祠に祈りを捧げなくては)と思いながら、祠付近を除雪していた。祈る時私は、修行を始めてから1か月が経つのに、麓の町の景色をまだ3回しか見ていない。今年は本当に晴れの日が少ないと実感している。

 前北根山の下山中滑落事故が発生した。今日は雪が降っていて、とても滑りやすいから仕方ないが、私は気の毒に思い滑落したものを助けようとすると「古祖お前、助けるでない。滑落したものは自分で事故を起こしたものは自分でなんとかしなくてはならない。だから助けるなこの者を助けると今度こそ咎められるそ!」

と怒られてしまった。斜面の下から「誰か助けてくれくれないですか?」と叫ぶ声が聞こえる。私は決断した。北根寺の自分の修行のために仲間を見捨てる考えは納得できない。だから私は咎められる覚悟で仲間を助ける事にしたのだった。


続く








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