【あとがき――という名の簡単な解説】



 はじめましての方ははじめまして、そうではない方はいつもお世話になっております。

 吹井賢です。


 この『君の光になれたなら』は、第七回こむら川小説大賞の為に書き下ろした短編です。テーマは「光」でした。……相変わらず一日二日で書いたんですが、ちょっと叙述トリックっぽいタイトルでしたね。紹介文の独白は実は未来のものなんですが(だから、「これまでも。そう、これからも」)、紹介文によく似た、本編ラストの文章は当然、希のものです。彼女達は、お互いがお互いの光だったんですね。視覚に障害があるとか、そんなことは最初から関係がなく。冒頭詩も気に入っています。例えば二人の進路が違って、別々の道を歩むことになったとしても、相手との思い出が手の平の中に残っている。だけど、もう一度、一緒に歩くことがあったなら、また手を繋いで、歩いていこう。そういう詩です。ここでの「手を繋ぎ」は、文字通りの意味というよりかは、概念的な話であって、まあ、「心を通じ合わせて」ってことですね。……実のところ、先に詩を書いてしまっていて、「あ、二人が手を繋ぐシーン、ないや」となっていたのは内緒です。

 彼女達の関係性……というよりも、向ける感情の名前が何なのかは分からないですが、希は多分、恋愛的な意味で未来のことが好きなんでしょう。未来の方は分かりません。あえて明言しないでおきました。でも、吹井賢的には珍しく、ストレートに『百合』って感じの作品でした。どうでしたか? それでもロービジョンに関する描写とか、そういった障害を持つ方の日常とかを題材にしたのは、如何にも社会学的で小賢しい感じもして、吹井賢っぽいと思います。手癖で書くとこうなっちゃうんですよね。

 テーマソングは、『愛はきっと』。アルバムを聞いていて、この曲が流れた瞬間に、作品のイメージができました。「大事じゃないはずの何かが今更になって身にしみる」というサビから、大サビでは「今どうでもよくない今日が始まる!」と歌い上げる、素敵な曲です。彼女達も、これまでの、当たり前にあった日常を抱き締めて、これからのどうでも良くない毎日を抱いて生きていってくれればな、と思っています。

 最後に、闇の評議員の皆様、ありがとうございました。


 この作品が、皆様の一時の楽しみになれば、それが作者にとって最高の喜びです。

 それでは、吹井賢でした。


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君の光になれたなら 吹井賢(ふくいけん) @sohe-1010

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