完全版
「時計」完全版
彼の手にはいつも懐中時計がある。そのくせ私のお茶会にはいつも遅刻する。他のことは完璧だし、性格だってとっても真面目なのに、不思議。
そして、今日も遅刻確定だ。約束の時間を過ぎた時計を見上げ、溜め息をつく。
「おーい!」
その直後、遠くから待ち人の声がした。走ってきた彼は息を整えつつ聞いてくる。
「今日はギリギリセーフ?」
「アウトよ」
上の時計を指差すと、彼は首をかしげた。
「おかしいな?こっちの時計では確かに――ありゃ?」
「どうしたの?」
「五分遅れてた……」
落胆する彼に私は言う。
「その時計、五分位早くずらしてもらった方が良いわね」
「確かにそうかも。余裕があった方が良いもんね」
納得している彼に、この際だからと尋ねてみることにした。
「どうして私のお茶会にはいつも遅刻するの?」
「それが、その……楽しみ過ぎて」
「普通は逆じゃないの?」
楽しみだと眠れなかったりして、普段より早く来れるんじゃないかしら。
「それは、いつもより念入りに支度するから」
「そういうことだったのね」
彼がそんなにお茶会が大好きだったなんて思わなかった。私もそうだから嬉しい。
「これからもたくさんお茶会しましょうね!」
「えっ……う、うん!」
反応が少し戸惑っているように見えたけれど、きっと気のせいよね。
五分でソウゾウした物語 チェンカ☆1159 @chenka1159
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。五分でソウゾウした物語の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます