第3話 クラスメイト
「ほんとに何なのあいつ!」
セリナの怒りはまだ収まってない。
「あいつってコウタ君?」
「そう!ユサ、絶対にあんなのと付き合ったらダメだからね!」
「大丈夫だよ。」
帰り道の分岐点まで来てまだ怒っているとは、今後コウタ君に会った時にはどうなることやら。
気がつくと私たちの影は随分と細長く伸びていた。
「セリナ、今日はもう帰ろっか。」
「なぁリョウ!いいだろ連絡先くらいくれても!」
「ユサのはダメ!」
「付き合ってないんだろー?」
「ないけどダメ。」
コウタはリョウにしつこくユサの連絡先を聞いていた。
「あ、そうだ。」
と、リョウはつぶやきユサへメッセージを打ち始めた。
スマホにピロンと通知が鳴った。リョウからだ。
『今日会ったコウタさ、気持ち悪くなかった?』
コウタ君はおそらく誰にでも今日みたいな接し方をするのだろう。コミュニケーション能力が高いだけの人を嫌いになる訳ではないのだ。
『大丈夫だよ。何も感じなかった。』
返信するとすぐに既読が付き、またすぐ返信があった。
『良かった。なんかあったらすぐに言ってね。』
その返信を見て私はスマホを閉じた。
翌日学校へ行くと、教室の前にコウタ君がいた。
「あっ!ユサちゃん!おはよー!」
テンションに比例しトーンの上がった声が廊下に響き渡った。
「コウタ君、私、高校ではあまり目立ちたくないんだけど。」
「えー、ユサちゃん可愛いんだから目立っていこーよ!」
「いや、だから…」
何となく思った。コウタ君はなにを言ってもダメなのだと。
「あっ、コウタ!」
と言いながら小走りで近づいてきたのはリョウだ。
「おい、ユサにちょっかい出すなよ!行くぞ!」
そう言ってコウタ君を自分たちの教室へ連れ戻した。私が教室に入ると、やはりこちらを見ながらコソコソ話しする人がいる。ですよねと思いつつ席につき、本を開く。
すると、クラスのカースト上位のミオナちゃんがこちらに歩いてくる。話かけづらい雰囲気は十分に出せていたと思うが、さすがはカースト上位なことだけある。空気など読む気がないようだ。
「ねぇ、ユサちゃん、あの二人と仲良いの?」
これは、まずい。標的に定めた時の決まり文句みたいなものじゃないか。
「一人は幼馴染で、もう一人は昨日初めて会ったよ。」
こういう時は弱気にならず、笑顔で印象よくしておくべきだ。
「へぇ、あ、ほんとだ、ユサちゃんってメガネと髪のせいであんま顔見えないけど、よく見ると可愛いね!」
怪しい。私の経験上、自分より格下だと思ってる人間にこういう接し方をするのは利用する時だけだ。
「ありがとう。」
「ねぇその本、何読んでるの?」
ん?
「えっと、シェイクスピア。」
文学少女に見せかけるためにシェイクスピアを持ってきたのは正解だった。
「わぁ、頭良さそ!」
何だろう、何か違和感がある。
「ねぇユサちゃん、私ねずっと気になってたんだけど、このペンケース、ユメオトのだよね!私ユメオト大好きなの!雑貨系は全部ユメオトで揃えてるんだ!このブランド知ってる人あんまいなくてさ、だからずっと話したいなって思ってた。」
違和感の正体はこれだ。ミオナちゃんは本気で私と仲良くなろうとしてる。であれば、私も誠心誠意答えなければ。
「ユメオト、中学の時からずっと好きなんだ!このペンケースは親友と色違いで買ったの。」
ガラガラと、ドアが開き担任が入ってきた。ミオナちゃんは自席に戻り、私も再び本を開いた。
昼休みになり、ミオナちゃんに「お昼一緒に食べよう」と言われた。それと同時に教室のドアが勢いよく開き、コウタ君が入ってきた。
「ユサちゃん!お昼一緒に食べていいっすか!」
相変わらず声がでかい。そして後ろからリョウが出てきて、
「おい、コウタ、俺たちだけで食べればいいだろ!」
と言った。
するとミオナちゃんが四人で食べようと誘ってきた。リョウが賛同してしまったために断りづらい。仕方がない。ふとコウタ君を見るとそっぽを向いて黙り込んでいた。
アブノーマル くらげれん @ren-k
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