第1話

 「だから忘れてたって言ってんじゃん!はぁ。」

 中学の同級生からのメールだ。あるとき唐突に、すがる想いで何人もの同級生にメールを送り付けていた。感情を殺し、自分を殺してきた僕は、何かを埋めようと躍起になっていた。ちょうど大学受験で浪人していた時期だ。会おうと約束して、どこで会おうかと送ったっきり、なんの返信もないものだから再度メールしたら呆れとも怒りともため息とも汲み取れる返信がきた。謝ったけどあとの祭り。その人からはそれ以上返信が来なくなってしまった。

 メールしてはこじれ、メールしてはこじれの連続だった。人の感情がわからず、一方的に自分の感情や主張をぶつけてしまうから、人間関係がすぐに破綻してしまう。心底自分という存在に嫌気が差した。まあ、そんな大層な自分すら持っていないのだけど。周囲がどんどん進んでいく中、僕だけが置いてけぼりにされているような錯覚に陥っていた。それに拍車をかけるように、メールもいろいろな人に送り付けていた。

 焦燥感と虚無感だけが僕を駆り立てる。今日もダメだったか、とため息交じりにベッドへ横になった。明日も今日が続くのかと思うと気持ちがどんよりした。ふと窓越しに月が見える。優しい月灯りとともに僕は眠りについた。

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アザとキミと、僕。 分倍河原はじめ @bubaihajime

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