アザとキミと、僕。

分倍河原はじめ

プロローグ

 アザが、世界の中心だった。


 僕が道を歩いていると、すれ違いざまに人が振り向く。それはチラッとだったり、チラチラだったり、ジーっとだったり、人によるけど、決まって視線が向かうのは僕の顔に在るアザだ。アザが世界の全てで、アザを中心として僕の人格は形作られていく。そんな自分を酷く醜いと思う時期もあった。

 でも、ものは考えようというもので、”この”アザをもった人間は僕しかいない。僕は特別なんだ。そう思うことで、ほんの少し気持ちが軽くなった。視線を感じても、僕は格好いいんだ。そう思い込むことで、僕は心を殺していった。そしていつしか、僕は人の感情というものに疎くなってしまった。

 そんなとき、キミに出逢った。太陽のような眩しい光ではなく、闇夜を照らす月灯りのように、ずっと僕を照らしてくれた。そんなキミに、僕は恋をした。


 キミが、世界の中心になった。


 キミと出逢ったことで、僕の世界はガラリと一変した。キミと言葉を交わすことで、僕の心は息を吹き返した。

 これから綴るのはアザとキミと、僕の物語。

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