奇矯な事後報告と設定開示から、神的存在の執着さながらの恋心とそれに宿る隠せない人並外れた薄気味悪さが台詞や地の文からから感じられて良かった。そして忘れてはならない。狂気を帯びるのはなにも人外だけではないのである。
叙述形式の旨味や利点にその構成が頼りすぎているきらいも感じなくはないが、平易な語りが次第に狂気を帯びていく下りが良い。本当の意味での問題の当事者が誰なのかを浮かび上がらせていく狂気的思想/緊張感の移行は、この規模の短編の中でもしっかり成されている。だから文字数に則した満足感があるのでしょう。
この作者の小説は問題の起点に普遍的な動機が置かれていることが多々あり、数を読んでれば展開が読めなくもないが、普遍的な動機がちりちりと燻り盛大なカタストロフィを引き起こす美学には同意できるので性癖としてはともかく性分としての好みは噛み合う感じがある。