時計

第1話

　　時計

時間は決して

お前たちをしばる

ルールではないのだ

それは

仮そめの

道しるべに過ぎないのだ

私はかつて

お前たちに

指標を与えた

お前たちは

放っておけば　すぐに

迷子になるゆえ

お前たちの星が

くるっと一回転

する時間を一日

太陽の周りを

ぐるっと一周

する時間を一年とする

あとは自由に

やるがよい

と言ったところ

お前たちは

勝手に時間を切り刻み

さらに細かい

区切りをつけた

一分　一秒　一刹那……

しかしそれは　

あくまで

架空の指標に過ぎないのだ

時間など

たんなる

まぼろしに過ぎないのだ

その証拠に

私は太陽系以外の

べつの星団には

それにふさわしい

異なる指標を与えている

勘ちがいするな

時間は決して

お前たちをしばる

ルールではないのだ

そこにはただ

広大無辺の

「変化」があるだけなのだ

　　　　　　　　　　　　　（了）