第9話 青の星香草

「うめぇ……!」


 森に入って三日目の昼。オレは木の枝に座って熱々のハンバーグを食べていた。これも収納魔法に入れていたアイテムだ。


 ゲームでは攻撃力がアップするバフアイテムだったが、こんなにおいしいとは知らなかったな。噛む度に肉汁が溢れ出し、もう口の中がびしゃびしゃだ。


「よし!」


 まるでご褒美のような昼食を終えると、オレは木の枝を蹴って鍾乳洞を探す旅を始める。


 ゲームでは、森のフィールドに隠し通路があって、鍾乳洞に向かうことができたのだが、現実にはそんなものはない。地道に探すしかない。


「本当に見つかるのかなぁ……。ダンジョンは見つかったんだからあるはずなんだが……」


 木の枝から枝へジャンプしながら、つい弱気な言葉が漏れてしまった。


 だが、この弱気もなにも根拠がないわけでもないのだ。


 ゲームでは、主人公のフェリシエンヌだから青の星香草を発見できたのではないだろうか?


 主人公の持つ運命力というのかな。そういうもので青の星香草を見つけられたのかもしれない。


 対してオレはどうだ?


 たしかにオレはフェリシエンヌよりも強い。ラスボスだからね。


 でも、運命力という点ではどうだろう?


 オレは青の星香草を見つけられるのだろうか?


「いいや! オレは絶対に青の星香草を見つけるんだ!」


 そして、フアナちゃんに褒めてもらうんだ! でへへ!


「あーああー!」


 オレは不安を振り切るように雄叫びでテンションを上げるのだった。



 ◇



「そろそろ当たりを引きたいなッと!」


 デカいイノシシのようなウリンソンボアの首を剣で刎ねる。


 首を失くしたウリンソンボアは、まるで躓くような挙動で地面に転がった。


「イノシシも向って来なければ殺されまい」


 軽く合掌すると、オレはウリンソンボアの体を収納魔法で収納する。


「しかし、本当にそろそろ当たりだといいんだが……」


 オレの視線の先には、切り立った崖にぽっかりと口を開いた洞窟が見える。


 森に入ってもう七日目。オレはまだ青の星香草を見つけられずにいた。


 これまでに何度も洞窟を見つけたし、その中には鍾乳洞もあった。だが、隈なく探しても青の星香草を見つけられなかった。


 まったく、まさかこんなに長くなるとは思いもしなかったな。一応、水で濡らしたタオルで体を拭いているとはいえ、臭っているだろうなぁ。早く風呂に入りたいところだ。


「一応、鍾乳洞か……」


 洞窟の中は、まるで大きなつららのような鍾乳石が垂れ下がる鍾乳洞だった。


 今度こそ当たりの可能性もある。オレは頭の中でマッピングしながら鍾乳洞を進んでいく。途中、ビッグバットやスライムなどのモンスターを倒しながら、どんどん地下へと降りていく。


「ここは……!」


 何度か突き当りにあたって戻りながらも道を進んでいくと、まるで東京ドームが入りそうなほど広い空間に出た。


 地底湖だ。


「もしかして、ここが当たりか……?」


 ゲームの時も鍾乳洞には大きな地底湖が存在した。俄然期待値が上がっていく。


「ということは……」


 オレはファイアボールを唱えると、地底湖にぶっ放す。


 すると、地底湖がジュウッと音を立ててファイアボールを飲み込んだ。だが、ファイアボールを飲み込んだ水面は戻るどころか凹んだままだった。


 そして、地底湖の水面が波打つように隆起し、何本もの水の柱が起立した。


「やはり!」


 実はここは地底湖なんかじゃない。とてつもなく巨大なスライムだ。


 巨大スライムの触手がオレへと殺到する。だが――――!


「ファイアウォール!」


 オレを包むように展開する炎の壁。スライムの太い触手は、ファイアウォールに当たる度に激しい音を立てて蒸発していく。


「うーむ……」


 洞窟で火を使い続けるとマズいか?


「ならば、凍れ!」


 オレが手を振ると、巨大スライムが、何本も生えていた太い触手が一瞬にして凍り付く。


「これでいいか」


 とても巨大なスライム。序盤では最強のモンスターであろうと、ラスボスの前には塵芥も同じだ。


「さて、行くか」


 オレは地底湖の淵を歩いて反対側まで歩いていく。地底湖の反対側には、まるでここに入れと言わんばかりに道が続いていた。


 道の先からは風が吹いている。出口が近い。


 道を抜けると、外に出た。とはいっても、まるで大地の裂け目のような深い渓谷の底だ。


 そこに咲いていた淡い青の花。これが青の星香草だ。


「やっと見つけた……!」


 オレは思わず膝から崩れ落ちてしまった。


「もう見つからないんじゃないかと思ったわ……」


 やっぱり主人公じゃないと見つけられないんじゃないかと思ったよ……。


 でも見つかってよかった。これでオレの持つゲーム知識は正しさが証明されたな。


 そして、もう一つわかったことがある。


 ゲームのシナリオは絶対的なものじゃない。変更が可能だ。これならば、オレがラスボスとして倒される未来も書き換えることができる!


 実は不安だったんだよね。ゲームのシナリオの強制力みたいなものが働いて、結局オレがラスボスになっちゃうことが。


 でも、これで一安心だな。


 あとは、このウリンソン連邦に引きこもっていれば大丈夫だろう。




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