第3話


あのね。


君と離れて、分かったことがある。

君の目の届かないところへ来て、理解したことがある。


こんなに時が経ってもなお、君の目を欲しがる自分がいる、ってこと。


君の目を手に入れたいと思ってしまう自分がいる。


……分かってるんだ。


もう君は僕とは別の人生を歩いてるって。

僕が求める君の視線は、もうすでに他の誰かのものかもしれないって。


……それでも。


僕は君の視線を、その「誰か」から奪ってでも、僕のものにしたい。


「誰か」じゃなくて、「僕」を見てほしい。


きっと今の僕なら、無理やり君にこっちを向かせることも出来ると思う。


でも、それは……僕の好みじゃない。

無理やりに僕に向けられた視線は、僕の求めるものじゃない。


だからさ。


僕は君の目を奪いたい。


君が、思わず僕のことを目で追いたくなるような、そんな僕になりたい。


君が今いるところから、僕を探し出したくなるように……。

君の目に、嫌でも僕が映るように。


君の目を奪えるなら、僕はそれで満足だ。

それ以上は望まない。


もう一度、今度は僕から、君の目を奪いに行くよ。

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君の目が 鈴乱 @sorazome

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