会社員タカシの転機

@s2tkz

第1話

竹本タカシは、東京の大手企業で働くサラリーマン。毎朝6時に起き、満員電車に揺られながら会社へ向かう。彼のデスクは書類の山で埋もれ、上司からのプレッシャーも日に日に増していた。彼の唯一の楽しみは、家から自転車で行くことができる河川敷で行われる毎週末の草野球。彼は地元の草野球チーム「相模原スラッガーズ」の一員で、毎週土曜日の午後に仲間たちと汗を流していた。しかし、最近は仕事のストレスで心身ともに疲れ果て、野球を楽しむ余裕もなくなっていた。

ある金曜日の夜、ある日、彼は仕事帰りにふらりと立ち寄った古びた骨董品店でどこか周りと違う雰囲気を持つバットを見つけた。そのバットをよく見ると、そこには「願いを叶える」と書かれた奇妙な古い札が貼られていた。店内は薄暗く、古い家具や雑貨が所狭しと並んでいる。店主は白髪の老人で、謎めいた笑みを浮かべながらこちらに近づき、「このバットには特別な力がある」とだけ言い、レジの方へ戻っていった。タカシは疑いながらも、そのバットを購入し、家に持ち帰ることにした。

夜、彼はそのバットに貼られた札が本当かどうか確かめるため、興味本位でバットを手に取り、「これからもチームのみんなと楽しんで野球ができますように」と願いを込めた。すると、バットが突然光り始め、一郎の体が徐々にバットに変わり始めた。驚きと恐怖の中で、タカシは完全にバットに変身してしまう。彼は自分の体が硬くなり、動けなくなる感覚に戸惑いながらも、次第にバットとしての感覚に慣れていく。

こうして彼のバットとしての生活が始まる。

バットになったタカシは、草野球チームの仲間たちに使われるが、彼らはそれがタカシが変身したバットであることには一向に気づかない。バットとしての視点から、彼は仲間たちの本音や隠された感情を知ることになった。例えば、チームのキャプテンである佐藤奏汰は、表向きは自満々でとても明るいが、実は自分の実力に自信を持てずに悩んでいた。また、控え選手の山田健太郎は、もっとプレーしたいと強く願っていたが、なかなかチャンスが回ってこないことに苛立ちを感じていた。

ある日、タカシはキャプテンが一人で練習している姿を見かけた。キャプテンは「自分がもっと強くならなければ」と呟きながら、涙を流していた。タカシはその姿を見て、キャプテンの苦悩を初めて知ることになる。彼は、これまで気づかなかった仲間たちの一面を知り、彼らへの尊敬の念を深めていく。

また、バットとしてのタカシは、試合中に仲間たちの声や応援を直接感じることができる。彼は、仲間たちがどれだけバットとして自分を信頼しているかを実感し、その期待に応えたいと強く思うようになる。特に、試合中に控え選手の山田がタカシが変身したバットを使ってヒットを打ち、チームに貢献する姿を見て、タカシは山田の努力と情熱を感じ取ることができた。

ある試合、タカシのチームは大ピンチに陥る。相手チームは強力な打者を揃えており、試合は相模スラッガーズ劣勢な展開に。しかし、バットとしてのタカシは、チームを勝利に導くために全力を尽くした。彼の努力と仲間たちの協力で、奇跡的な逆転勝利を収める。この試合を通じて、タカシはチームの絆を再確認し、自分自身の成長を実感する。特に、キャプテンが2アウト、ランナーニ塁、一打同点の場面で回ってきた最後の打席でホームランを打ち、チームを勝利に導くシーンは感動的であった。

試合の終盤、チームは1点差で負けていた。

そして、最後の打席に立ったキャプテンは、自主練でも試合でもずっと使い続けてきたタカシを手に取り、深呼吸をしてからバッターボックスに立った。キャプテンはタカシに向かって「頼んだぞ」と呟き、全力でスイングした。その瞬間、タカシはキャプテンから強い意志と信頼を感じ、バットとしての力を最大限に発揮した。ボールは見事にスタンドに飛び込み、チームは逆転勝利を収めた。

試合後、バットになっていたタカシは元の人間の姿に戻った。彼はバットとしての経験を通じて、仲間たちとの絆や自分自身の成長を実感した。仕事のストレスも軽減され、彼は新たな気持ちで日常を迎えることとなった。

彼は、これからまた仲間たちと共に野球を楽しみ、汗を流すことを思い描いた。また、骨董品店に戻り、店主に感謝の言葉を伝えると、店主は「本当の力は君自身の中にあったんだよ」とだけ言い、微笑んだ。

タカシは、バットとしての経験を通じて得た教訓を胸に、仕事や日常生活にも前向きに取り組むようになる。彼は、仲間たちとの絆を大切にし、困難に立ち向かう勇気を持つようになった。そして、彼はこれからも野球を通じて成長し続けることを誓った。

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