8.提案
家について早速、ブルームさんと私はキッチンに向かった。コンロの火は少し小さくなっていたがまだ付いていた。
「フィオラ、まずコンロにある魔法石に手をかざして。」
「こうですか?」
「そう、そうしたらコンロの火をつけたときと逆のことをするんだ。こう、魔力を吸い込む感覚で。」
私は手の中に魔力を押し戻すようなイメージをした。するとコンロの火はすっと消えた。
「消えて良かった…。あのまま放置してたら本当に危なかったからね…。」
「教えていただきありがとうございます。」
「いいよ。にしてもフィオラの家ってすごく広いんだね。」
そういうとブルームさんは家の中をくるくると見渡した。
「そういえばご両親は?」
「えっと、少し前になくなってしまって…。」
するとブルームさんはぎょっとした顔で、
「こんなに小さいのにどうやって生きてきたの…!?」
といってきた。
えっと…、と言葉を濁していると、ブルームさんは少し考えた後、
「フィオラ、話があるんだけどいいかな。」
「なんですか?」
「私がここに来た理由ってこの村の調査なんだよ。で、本来は1週間でいったん報告に王都へ戻るはずだったんだけど、全員亡くなったとされていた村に生存者がいたんだ。このまま帰るわけにはいかない。」
そういうと私の顔を見つめた。
「フィオラ、少しの間この村に滞在した後、一緒に王都に行かないか?調査目的って言うのもあるんだけど、1人ここに残すのが心配なんだ。」
「なんでそんなにブルームさんは私に優しいんですか?」
「実はな、私も昔幼い頃に両親を亡くして孤児として生きていたんだ。そのとき誰も頼れる大人がいなくてずっと飢餓と闘っていたんだ。だからフィオラにはそうなってほしくない。」
ブルームさんは私の頭にぽんっと手を置いて、
「王都に行ってからのことは私が保証する。だから一緒に来てくれないか?」
私は悩んでいた。この世界に転移してから数日、まだこの世界のことをよく分かっていない。前いた世界には存在しない魔法という概念やモンスターなど危険なものも存在する。しかし、王都に行ってもし転移してきたことがばれたら…。それにブルームさんを完全に信用できている訳ではない。
「すみません、少しだけ時間をくれませんか?」
「わかった。この村の調査が終わる4日後にもう一度聞くよ。」
するとブルームさんは、
「まあどちらにしても危なっかしいから、色々と教えないといけないことがいっぱいあるね。」
そういうとニカッと笑った。
新たな世界でほのぼのと 山鶉 @sibakura
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