最終話 博識連合解体、そして――。
住吉会幸平一家、築地久松が逝去されたことにより、次の総長を決断する会談が数多く開かれた。早急的にそうした会談が開かれることで、他の暴力組織に付け入る隙を与えない意味も含まれていた。
そして決まったのは加藤英幸だった。第十三代総長として住吉会幸平一家を取り仕切っていく。
◇
加藤は、まず目を付けたのは公判中の田代俊介だった。奴と取引していた漫画出版社に殺害予告を送る。「田代俊介が出所したら必ず殺すから。覚悟してやがれ」と。
次に、加藤は博識連合にも同文の文章を送った。そのせいか、またしても歌舞伎町は冷戦下に陥る。構成員同士がにらみ合いをして、それだけの時間だけが過ぎ去っていく。
そしてその時は訪れた。
加藤の命令で住吉会の構成員のひとりが博識連合の総長を暗殺したのだ。そのことで、あっという間に博識連合は求心力を失い、瓦解する。チャイニーズドラゴンなど、どこ吹く風で。その構成員は逮捕され、懲役十年が付いた。
田代俊介が叙情酌量の余地があるとし、無罪放免で釈放されると、夜中の上野で俊介こと夜中は指を潰された。これでもう漫画を描くことは出来なくなった。
◇
斉間こと俺は一連の暴力団の動きを関東連合から通じて、情報提供を受けていた。これは高く売れるぞ、とニヤリ笑いを浮かべてしまった。
関東連合の翔に訊ねたことがある。どうして俺に協力するのかと。すると、翔は涙声でこう言った。
「メディアの中だけでも拓也さんが生きていたという証しが欲しかったんだ。アウトローの人間はどうしても闇に葬られてしまう。あの人はそうするには惜しい人なんだ」
◇
夜中の三時。俺は、以前まで田代広大が働いていたコンビニに訪れた。そしてそこである光景を目にして驚いた。なぜなら雪野香里奈がコンビニの制服に身を包み、レジの傍に立って接客をしていたからだ。
「あなた・・・・・・どうして――」
雪野は肩を竦めて、「借金を返し終わったので、もう真っ当に生きようかなって」と言った。
俺はそうですかと言った。そうしたら彼女は微笑みながら弁当コーナを指差した。
「お礼でひとつ、差し上げますよ」
奢ってくれるのだろう。俺はありがたく、のり弁を手にとって、それから缶ビールも取りに行ってそしてレジで会計した。
「頑張ってください。田代さんの分まで」
すると彼女は温かい笑みを漏らした。
「はい――」
END
コンビニ弁当あげたら人生変わった。 大瀧潤希sun @ootaki0615
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます