第3話

 シュワシュワと、現実の音がなく。

 グラスの中の、ラムネはぬるい。

 刺激もない、あまい液体。


 ラムネは、瓶の中だから綺麗なのだろう。

 取り出して、眺めてなんてみるもんじゃない。




 結局彼には彼女ができたらしい。おめでたいことだ。

 私は彼をよく知ってるから。

 優しくて、

 意地悪で、

 揶揄い好きで、

 でも真面目な彼のことを。

 明るくて優しい彼女とよくお似合いだと、心から思う。幸せになってほしいと、思う。


 息が苦しくて、ああ、水の中にいるのかと思った。

 彼が彼女持ちになったなら、もう好きでいる理由はない。



(それでも…………どうしようもない……)



 そう、多分良かった。もともと、ただの部活仲間で。そもそも、恋愛とか未知すぎて怖いし。だから、だから、だから……



「…………っ」



 ゴクリと飲み込んだラムネは、それでもまだ、パチリと爆ぜて喉に残った。







 なんて、こんなことを書いても想いは昇華なんてされなくて。

 せっかく打ち込んだ文字を消した。

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温んだラムネ こたこゆ @KoTaKoYu

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