第2話 秘密
帰りの挨拶とHRが終わった。
1年4組は、バスケットボール部が多くいて、
帰りの挨拶が終わると直ぐに体育館に向かう。
「おーい!!涼太ー!早く行くぞー!!」
「ごめん!今から残んなきゃ行けないんだわ!」
「はー、まじかよー、早く来いよ!!!」
「おう!」
私は、バスケ部が出ていった後にそーっと帰った。
下駄箱の近くでは陸上部とサッカー部が靴を履き替えていた。外には既に練習しているサッカー部の先輩達。
そして、少し聞こえる吹奏楽部の楽器の音。
丸で、青春漫画の学校のような雰囲気だった。
そんな中誰とも話さず、すーっと1人で帰る。
帰り道は朝とは違い、セミの声が大きくなっていた。
最寄りの駅に着いて、今日借りた本を鞄から出そうとした。
しかし鞄には本は入っていなかった。
「あー、やっちゃった。でもまだそんな経ってないし取りに戻るか。」
ため息をつきながら、来た道をもう1回通る。
学校から最寄り駅まではそこまで時間はかからないが、歩いていくならば15分くらいはかかる。
学校に着いた時には先ほどまで始まっていなかった部活は既にストレッチを終えていて、
吹奏楽部も本格的に曲を練習していた。
賑やかな校舎に1人 忍び入るように学校に入る。
1年4組は、4階にある。
階段で行くにはかなり疲れる。
周りを気にしながら普段、教師や非常時にしか使わないエレベーターのボタンを押す。
直ぐにドアは開き、いち早くドアを閉めた。
エレベーターには、初めて乗ったが特に普通のエレベーターと変わることはない。
4階までは一瞬だった。
4組は一番端で他の教室の前を全部通らなければならない。
「はあ。めんどくさいなあ」
そう思いながら、1歩ずつ静かに足を進める。
4組の前に着いた時、夏だったためかなり汗をかいてしまっていた。
「あっつ」
そう思いやっとの思いで教室に入ろうとした。
その時、教室から声が聞こえた。
「そうか。親御さんとこの前面談したばかりだけど、また話し合わないとな。」
「はい。」
話しているのは担任と燕 涼太だった。
会話を盗み聞きしようとした訳ではなかったが、自然とその会話は耳に入ってきた。
「入院はまだなのか?」
「多分まだ、親も色々と混乱しているようで、もう少しかかりそうです。」
「近いうちに俺からみんなには言っておくから心配すんな。みんなお前の味方だ。」
「はい。ありがとうございます。」
「残された時間でたくさん思い出作ろうな。
燕。」
「そうですね!頑張ります!」
「おう。」
「じゃ、先に行くな。」
と教室から出る担任から隠れた。
教室に入ろうとすると燕がこちらを見つめていた。
「あれ、桃谷さんだよね?」
と、涼太は恐る恐る入る日菜に言った。
「うん。ごめんね、なんか邪魔しちゃって、」
日菜は申し訳ない気持ちで溢れてしまっていた。
「もしかして、聞こえてた?」
「ごめんなさい。聞くつもりは無かったんだけど聞こえてきちゃったみたいな、」
聞いてしまった罪悪感が体全身に渡った。
「そっか。いいよ別に。どうせ分かる事だし、
俺も誰かに打ち明けたかったからさ。」
そんな日菜に寄り添うようにかけてくれた涼太の言葉。
「桃谷さんだけに教えてあげる。」
と涼太は言い、日菜に病気の事を打ち明けた。
「転移性脳腫瘍って言ってね、他の部位の癌が脳にいってしまうって病気なんだ。
俺の場合、肺の癌が脳に転移したって感じ。
これが一番多い、ケースらしい。
ステージ4の癌だってさ。」
涼太は自分の病気の事を日菜に詳しく説明した。
何も言葉が思い浮かばなかった。
あんなにも元気に、明るい人がステージ4の癌なんて、あまりにも信じられなかった。
「このままいけば、俺は半年以内にあの世に行く。」
「なんか治療法とかは?ないの?」
「最新の技術で、あるにはあるけど、それでも手術は難しいらしい。」
「それに手術で、ものすごいお金かかるから、親に迷惑かけたくないよ。」
その言葉に少し切なさを感じた。
「俺さ、元々肺に癌があってそれを知ったのは中2の夏だった。
でも、治るだろ。ってずっと思ってたんだよね。
まさかこんな事になっちゃうなんて。」
日菜は漠然とした。病気を抱えていながらもあの光のような笑顔をつくっていたなんて想像もできなかった。
しばらく言葉がでなかった。
「そうだ!桃谷さん。俺が死ぬまで俺に恋愛を体験させてくれない?」
急な提案に驚きと困惑が隠せなかった。
「え、?どういうこと?」
「俺が死ぬまで、俺の彼女になって欲しい。」
あの鳥が旅立つ時に いろたすな。 @rrruui
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