第1話

雨が降っている。

雨の匂い、汚れている、普通の人なら絶対に通らないであろう路地裏の、

表通りからは見えないような奥のほう。


僕、賀勢音緒は、此処で人間を拾った。

汚い服。数々の傷。放っておけなかった。

一人暮らしには少し広く、寂しい家に住んでいたから、

まぁいいや、と軽率な判断をしてしまった。


そいつは、

「私、津秋つあき自由じゆうです、25歳です。」

と言った。


「僕は賀勢かせい音緒ねお。24歳だよ。」


僕よりも弱そうな奴で、身長は高いが可愛らしかったので、

年下とばかり思っていたが、ひとつ年上だったとは。誤算。


「タメで喋ってもらって構わないから。」


こんな流れで自由と同居することになったわけなんだが、

一緒に生活していて気づいたんだ。


こいつ、情報網がとんでもない。幅が広すぎる。僕の活動域に関しては特に。


「お前、僕と組んでくれないか。」


僕は既に組んでる相手はいたけれど、もう今日で解散しよう。

相方だった奴にもういい、と連絡を入れる。


了解です。ありがとうございました。

とだけ返ってきた。おもしろくない。


「私の方の相方も解散希望を出してきたのでいいですよ。」


都合が良すぎる。同居して相方とか最強の関係だな。

Win-Winであるという幸せをいっぱいに噛み締めた。


そんな僕が狂い始めてしまったのは、この日からだったかもしれない。

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ひとつ、屋根の下で とあるお嬢様専属のシェフ(鯖) @pinya0216guy

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