紫陽花の終、夏の気配と共に曇よりとした
空の下、瑞々しい葉の陰に、そして視界の
片隅に それ は。
繰り返しにハッとする。確か去年も。だが
遠い記憶の中でそれは曖昧に潤み溶けて
流れてしまう。
いつしか 異質 が紛れ込んでいる。
踏切の遮断桿が陌間を分ける。だがそれは
何故に、其処に在り続けるのだろう。
蒼紫に潤む視界の中で、息苦しい程に。
罅割れた甲高い音が警告する。
途端、舞い上がる傘と声にならない叫びが
劈く。明滅する遮断燈、警告音、そして
激しい感情の吐露までが。
潤んだ空に溶ける。
「ねぇ。」
夏が、又来る。