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 肌の擦れる様の美しい記憶。朝日の薄橙にブレンドされた部屋の一面と1人の女。艶感じるわ線美、朝は其の夜の後。日照り、影の目立つその様、普段の幾倍美しく見えた。


 彼女は会いたい時に会ってセックスをするだけの中だが、彼女のことが好きじゃないわけじゃない。だが私は情けない不安で今の関係を断ち切る気がない。彼女とは男女の原理的な関係を築けていて、現状大変満足だと、己に暗示している。

 女は裸のまま立ち上がって部屋右の冷蔵庫に手をかけた。布団にくるまったままの私の黒目は其れを追う。女は笑った。どうやらその様子がバレていたらしく、自分がひどく滑稽に思えた。それでも目は離れなかった。ひどく美しいその様は、滑稽に思われる価値のあるエロスのそれだった。


 春掠め過ぎた。今日はバイトの日だ。喫茶店のバイト。喫茶店に向かう中途、タバコ屋でいつものハイライトを買うルーティン。タバコ屋は古き良き訳でもないが、店主の老人は愛想が良く気に入っている。


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麗しいわ 向井信彦 @YuQuI

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