付記

 第三騎士団に代わってメイベ砦に入る予定であった守備隊の副隊長は慎重な性格で、農村での夜営においても不寝番を免除することはなかった。そのため守備隊はメイベ砦の【灯台】から立ち昇る輝きを目撃し、森撃しんげきの発生を知った。

 守備隊は直ちに村民に避難するよう命令してから、メイベ砦に急行した。だが砦に辿り着く前に魔物の襲撃を受け、守備隊は奮闘したものの全滅した。

 だが、彼らの奮闘が稼いだ貴重な時間は村民の命を救い、王都防衛に必要な猶予を作った。

 そうして守備隊の御蔭で生き延びたとある村民の子は兵士となり、再建されたメイベ砦を守った。


 王都の【灯台】が輝いた事実は直ちに軍部で共有され、早急に防衛の準備がなされた。防衛には再配置のため王都に留まっていた第三騎士団も加わった。森撃は凄まじく王都の西門を破ったが、劣る劣ると揶揄されていた第三騎士団が獅子奮迅の活躍で王都の盾となり、森撃の規模を考えると市民の犠牲は小さかった。

 そうして第三騎士団によって救われたとある商人の孫は学者となり、森撃の原因を解明するに至った。


 王都の【灯台】から立ち昇った光柱は、王都を目指しその手前で夜営をしていた賢者の一行も目にすることになった。

 異変を察知した一行は早急に王都に向かい、森撃で押し寄せた魔物の中でも最も強大な四首竜を討伐した。

 森撃の恐ろしさを身をもって知った賢者は弟子の育成に一層力を注ぐようになり、賢者の孫弟子たちは三度目の森撃の防衛に大きく寄与した。


 メイベ砦が再建された際、あわせて慰霊碑が建立こんりゅうされた。慰霊碑には「光を灯した英雄たちよ安らぎあれ」と刻まれている。

 二度目の森撃において生き残ったメイベ砦の兵士はいなかった。

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メイベ砦の陥落 ささやか @sasayaka

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