二十一日目・フェリー船上~東京フェリーターミナル~自宅

 9月5日(月) 曇り時々晴れ(走行 45km)


 部屋の小さな窓から、水平線の真上に浮かぶ朝日が見えた……そう、僕はまだ海上にいる。

 今日はフェリーの中でまる十七時間、その後自宅への走行で四時間半を費やした。

 朝食を頂いた後、外へ出て空や海を眺めながら深呼吸した。

 フェリーは丁度犬吠岬沖を通過していることを知る。今日は残念ながらどんより曇り空。一時的だが雨も降り注いだ。青い海と空のコントラストが台無しになってしまった。それでも、デッキから見える陸地……特に、ちょうど真横に横浜ベイブリッジが見えた時は感動モノだった。これこそ、船旅の醍醐味なのかもしれない。

 船は午後五時に東京港へ到着。ここからは、自走で都内を通って自宅へと戻る。

 丁度東京は帰宅ラッシュの時間。道路を走っていても行き交う車や人が多く、ぶつからないよう細心に注意を払いながら、晴海、築地の大通りを走り抜けた。

 都内を走るのは相変わらず緊張するが、ぐるりとそびえ立つ高層ビル群や東京湾岸の風景を楽しみながら築地から海岸通りを平和島まで南下し、第二京浜を経由して、多摩川大橋から多摩川の堤防に入った。

 堤防に入ると自宅のある府中までは一直線。ここまで来たら車と並走することも無いし、快適に進められると思いきや、運が悪いことに自転車のランプが故障したらしく何度スイッチをいじってもなかなか点灯しなかった。自宅までは残りわずかということもあり、僕はランプを諦め、途中ジョギング中の人達にぶつからないよう慎重にゆっくりと走った。

 やがて自転車は府中市内に入り、見慣れた風景が目の中に入ってくると、「ああ、よくここまで来たもんだ。」と感動で胸が高鳴り始めた。

 そして午後九時三十分……暗闇に包まれた自宅のアパートが僕の視界に入った。

 自転車から降り、背負っていたリュックを降ろした僕は、思わず大きくガッツポーズした。

 無事、自宅に到着!! 

 到着後、片づけをしながら僕はしばし到着の余韻にひたっていた。

 真っ黒に日焼けした肌、千キロ以上走行してすり減ったタイヤ、土産でパンパンに膨れ上がったサドルバッグ、旅先で出会った人たちと交換した連絡先で埋め尽くされた手帳……。

 そのすべてが、三週間にも及ぶ旅の思い出であり、軌跡である。

 フェリーの往復以外はすべて自走という、昨年成し遂げられなかった快挙を今年は達成した。これだけでも、ひとつの大きな収穫だったといえよう。

 自分のチカラとは、計り知れぬものなり。


 思い返すと今回の旅は、殆ど「走る」ことにウエイトを置き、「観光」は二の次だったと思う。それが昨年の旅との違いであろう。そのため、何度かのシャッターチャンスを逃したり、じっくり見物できなかったりすることがあった。その代わり、北海道の雄大さ、人との出会い、旅の面白さを心から堪能できたと思った。

 そして、ハプニングも予想通り起こった。パンク一件、病気ダウン一件、しかしこれらも、何とか?乗り切ってきた。

 前回以上に体力を使った旅だったが、ここまでこれたのは多くの人達の協力があったからに他ならない。

 ここまで旅を支えてくださった人達、道内で出会った旅仲間たち、本当にありがとう。心より「感謝」の一言です。

 感謝! 感謝!……ってところで、今回のペンを置かせてもらいます。

 次は、いつ行けるかな? 

(了)



 ということで、いかがでしたでしょう? 

 三十年前の旅の記録。三週間もの長旅でしたが、旅のさなかに毎日メモ程度に書いていた記録なので、ホントに駄文だったな~……と今読み返しながら恥ずかしく思っています。

 でも、当時の雰囲気、風景、自分なりに思っていたことが皆様に少しでも伝わると幸いです。最後に「次、いつ行けるかな?」なんて呑気なことを書いていましたが、あいにくこれまで一度も行けていません(笑)。

 仕事も家庭もあり、年齢も五十路に入り、もう、こんな自由気ままで体力の要る長旅は正直無理だと思います。

 でも、いつの日か時間が出来たら、またトライしてみたいかも(懲りてないな(汗))

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北海道チャリぼっち~1994・夏~ Youlife @youlifebaby

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