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「兄貴!ラッキーでしたね!!」
「あぁ、まさか極東の珍しい髪と眼をした
「あんな街道の近くで無防備に寝てるバカなんて初めてみたぜ」
「すぐそばにアルダリアの街があるってのにな」
ぎゃははははという下品な笑い方をする男達。
筋肉隆々で怖い顔。その見た目で全員が武器を装備している。
明らかな盗賊。どこから見ても盗賊だった。
「…………ふむ」
どうも俺です。
ちょっとお昼寝していて、目覚めたら全裸で鉄製の檻の中にいました。
荷車に乗せられてドナドナされています。
「どういうこと?」
街の入り口が見えた辺りで安堵した俺は、いい天気ということもあり、休憩がてらお昼寝しようと眠った。そして、目覚めると明らかに怪しい集団に捕まっていた。
理解できない状況である。
「目が覚めたようね………」
背後から聞こえた声にビクッと反応してしまう。振り返ると、そこには少女がいた。うす汚れた格好、骨が浮かぶほどやせ細ている。加えて、彼女の腕には鉄製の枷が嵌められていた。なんて格好なんだ、けしからんなまったく。
気づかれないようにガン見である。最低?だまれ小童、据え膳食わぬは男の恥だ。まったく。
それに汚れている上にやせ細っているが、俺の美少女レーダーは彼女はとんでもなく化けると反応しているのだ。
「貴方も運がなかったわね。ここら辺では有名な『黒錠の蛇』に捕まるなんてね」
「え、ダサ。なにその名前、厨二にむぐぐ」
少女は慌てたように俺の口を塞いできた。
「し、静かにしなさい。貴方死にたいの」
「むぐぐぐ」
「『黒錠の蛇』は罪もない人間を攫って売り払う盗賊集団。人身売買をはじめとした様々な犯罪も平然と行う、今やこの辺で一番危険だって言われてる連中よ」
なるほど、なるほど。
え、マジですか。お昼寝してたら滅茶苦茶危険な奴らに攫われてたの?
つか胸当たってる。しかもいい匂いがする。ラッキー!
「わ、わかったから離れてくらはい」
恥ずかしい。こんな反応すれば俺が童貞だということがバレてしまう。
俺は落ち着くために、声のトーンを落として少女に質問する。
「それでどうゆう状況なのか色々と教えてくれるか?」
冷静沈着とは俺のためにある言葉。
このクールさで先ほどまでの失態を少女は忘れてくれるに違いない。
「そ、その前に少しくらいは隠してもらってもいいかしら」
少女の視線の先に目をやると、キャンタマがゆらゆらとしていた。
終わった。もう取り返しのつかないレベルだ。
なので俺は開き直ることにした。必殺『え、これくらいなんともないが?』である。致命傷を負っているにも関わらず、平然とした顔をしていることで相手にも『あれ、これって私がおかしいの』と思わせるのだ。
「そんなのは些細なことだ。今は現状の把握が最優先だ」
「え、些細な?」
「命がかかっている状況なんだぞ。裸くらいで騒ぐな」
「そ、それもそうね」
(ふぇ~、あっびねぇ~)
異世界で初めて訪れた尊厳の危機を乗り越えてやったぜ。
俺を舐めるんじゃねぇよ(キリッ)。
それから彼女に色々と質問をしてから、名前を聞くのを忘れていたことに気が付いた。少女は少し迷ったような様子だったが口を開いた。
「私の名前はアリステラ=ローズブレイドよ」
「……ローズブレイド?」
「私の家名を聞いても驚かないのね。ただの世間知らずか、無知なのかしら」
これでも俺は『レガリア』を課金するくらいにはプレイしていたから、彼女の名前には聞き覚えがあった。
レガリアのゲーム内では少ししか触れられていなかったが、彼女の性であるローズブレイド家は、この世界における三大宗教の一つである『聖光教会』のトップ最大主教の一族なのだ。
何故、俺がそんなことを知っているのかというと。
最大主教である【フラン=ローズブレイド】が俺の推しの一人だからだ。
推しのことは全て知りたいタイプのオタクである俺はレガリア公式に問い合わせて、彼女の情報はほとんど全て網羅しているのである。
彼女がどんな人物なのかというと、最大主教という立派な役職を持ち、他者の為に懇親的に奉仕活動をするような人物。つまりは聖女である。
その清らかな内面もさることながら、外見はボンキュッボンのナイスバディで、黒のシスター服からチラチラと見える太めのおみ足は俺のド性癖にぶ刺ささったのだ。つまり性女である。ぜひとも挟まれたい。
話がそれたが、現最大主教である【フラン=ローズブレイド】には四つ年下の妹がいるという設定があった。突然失踪した妹を探すフランは、ストーリーを進める中でレガリアのラスボスが操る組織の罠にかかり囚われることになる。その時に主人公に救われて仲間になり、妹を探すために同行することになるというのがレガリアでのストーリーの流れだった。つまり、今がどういう状況なのかというと、どうやら俺は誘拐されている最中のフランの妹との邂逅を果たしたようだ。
考えうる限りで一番最悪のタイミングで。
「こちらからも一つ質問いいかしら。……その貴方の下腹部にあるのって」
まずい。初対面の人に聖痕を見られてしまった。
というか色々と見られてしまった。こうなったら彼女に結婚してもらうしかない。
え、激ヤバ男だって?違うから、まだなにもしてないから!!
それよりもなにかいい言い訳をしないと。
「こ、この傷は――」
あかん。何も思い浮かばんぞ。
くっ、どうすれば。いや待て待て。
そういえば、レガリアのストーリーで身体のどこかに印を刻んでいる組織がいたような。なんか裏世界を駆ける存在みたいなのが……。
『見られてしまったね。この神霊の聖痕を……』
そうだ!いた、いたぞ!!
なんか貧乳で頭がキレる女性キャラが!!
クソ!貧乳キャラだったから記憶が曖昧だが、なんかカッコいいことを言っていた。こうなったらやけだ。
使わせてもらうぜぇ、アンタのセリフ。
俺の名誉のためにも、彼女との初夜のためにも。
「……見られてしまったな。この神霊の聖痕を。だが聡明な君なら分かるだろう。もしこれ以上踏み込んでくるのならば、俺は消えなければならない。あくまで俺は一般人であり、ただ捕まった一介の奴隷に過ぎないんだ。だから、何も見なかったことにしてくれないか?」
ど、どうだ。記憶が曖昧すぎてセリフは違うかもだけど、あのキャラとほぼ同じことを言ってみたぞ。
「……なるほどね。道理で家名を聞いても驚かないはずだわ。アナタは、いやこれ以上は無粋ね」
おお!?なんか知らないけど通用した。
滅茶苦茶チョロいんだけど、大丈夫かこの子。
「姉様があなた達の組織に依頼したの?」
くっ、質問攻めか。言葉攻めなら大歓迎だが、今は聖痕を隠すことが最優先である。それにこれ以上の会話はボロが出てまいそうだし。
「……これ以上は話すことはないよ。ただ一言、『時は必ず来る』とだけ」
「そう、分かったわ。今はその言葉を信じることにする」
よっしゃあああああああ!!
口から出まかせ作戦大成功だ。噓をついてしまったのは申し訳ないが、女神との契約のことを知られるわけにはいかないし、今は彼女の信頼を得ることが最優先だ。
と、そこでアリステラの身体が震えていることに気が付いた。
よく見たら怯えたような目をしている。
フランの歳が一七歳だったはずだから、設定通りならアリステラは十三歳ということになる。日本で言うと中二くらい、俺の妹と同い年だ。
その歳で悪党に攫われているのだから、怖くないわけがないよな。
そう理解して俺は無意識にアリステラの頭を撫でていた。
「そう心配するな。大丈夫だ、どうにかなる」
多分、この時だった。
アリステラの頭を撫でて、彼女の温まりを感じた。
その震える身体から彼女の感情を感じてしまった。
生きているのだ。彼女はこの世界で、確かに生きているのだ。
今まで夢心地だった感覚が、この世界が現実であると認識へと変わったのは。
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チート能力『育成者』で異世界ハーレムを築きたかった…… 神楽ゆう @OvTen
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