世界を創りしあなた達へ贈る詩

あなたは今生まれました。遠い園から、虚空の先から、終末と永遠の狭間から、あなたはやっと生まれました。それは宇宙の始まりと同値でした。世界はあなたのためにだけ光り輝き、熱を発しました。ですがあなたは同時に罪を背負い、欲を抱き、罰を受けました。世界に闇が生まれたのです。


あなたは悲しくはありません。あなたはただ、歓んでいました。生まれてきた歓びに、人生の始まりに、明るい未来に、歓呼したのです。そう。魂が震えるほど、歓喜に満たされて、あなたは産声を高らかに歌ったのです。


――ユギト。樹華のミを借りて


あなたは呼吸をし、自然の乳房から歓喜と幸福を飲みます。そして、あなたは人生という道を歩くのです。


――増殖する神、夜槃路から解き放て


ああ、なんてあなたは悟っているのでしょう。きっとすべてを忘れ、また覚えているからなのですね。


あなたは涙を流します。緩やかに、揺蕩うように。火が揺らいでる。顔が揺らいでる。遠くから聞こえてる。夢の、園のソフィア!


全球凍結を経て、あなたは永い眠りに就くのです!

ああ、その眠りこそ、全能からの目覚めへと繋がる夢の揺り籠! 悪の揺り籠! 花の目覚めへと!


あなたの脳は冴え渡り、ここ、フィニス(最果ての地、終末)に一人立つあなたは、全能感に打ち拉がれ、泣く泣く空を仰ぐのです。


風が涼やかで、空は晴天で。ああ、あなたはまた知るのです。この日のために生を受けたのだと。


ああ、人生よ、全ての謎よ。いつの日か知るときが来て、この愛から去るとしても、願った夢、叶った欲、識辺や燐死などが始まるとき、業魔の裁きから甦れ、涅槃寂静の終わりが来るから。


夜の終わりが、明日の終わりと、昨日の終わりと、世界の終わりと、私の終わりにつれて、咲いていく。その様は圧巻で、震える歓喜に酔い痴れて、総身を震えさせるのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

No.14 世界を創りしあなた達へ贈る詩 空色凪 @Arkasha

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ