第6話 新しい仲間?

「お、おい、あのガキども、ワイルドウルフを連れてるぜ」

「マジだ。あんな獰猛な魔物を手なずけてるのか?」

「見るな、見るなよ。ああいうのはヤバイって相場が決まってんだ」


 最寄り街に移動できたものの、周りからヒソヒソと何か話をされ、かなり距離を取られている。

 もしかして異世界人ってばれてるのかも。そういえば制服のままだしな……。


 ちなみに門に兵士などはいなかった。見た所、街は少し荒れている。

 昼間から酒を飲んでいる大人が多く、もしかしたらこのあたりはあまり治安が良くないのだろう。


「霧島くん、どうしますか?」

「どうしようか。まずは色々と情報収集したいし、食事でもしようか」


 僕はウルフの背中に括り付けていた袋にぽんっと手を置いた。

 ゴブゴブからもらったこの世界での通貨だ。

 使わないのでどうぞと言われたが、どうやって手に入れたのかまでは聞くのが怖かった。


 ちなみにこの状態でもゴブからの経験値はたまに入ってくるので、今も元気に狩りをしているらしい。


「ウルフちゃん、入れるんですかね?」


 藤崎さんの言う通り、犬は入れるのだろうか。日本基準なら飲食店は難しい事が多い。

 とりあえず聞いてみよう。


「ん、ガキが二人で食事だ? どうせそんな喰わねえだろ。だめに決まっ――ひ、ひぃワイルドウルフ!?」

「あ、はい。一緒に食事できますか? 大人しい子なんですけど」

「ガルルルルルゥ!」

「こら、威嚇したらダメだよ」

「ど、どうぞこちらにぃ!!!!!! い、一番広い席を用意しますので!?」


 顔に傷のある怖そうな店員さんだったが、どうやら犬好きらしい。

 ワイルドウルフを見るなり、良い席に案内してくれた。


 もしかしてこの街、犬好きが多いのかも。

 あと、言葉は通じるみたいで安心した。


 食事はよくわからなかったのでお勧めを頼んだ。


 ワイルドウルフにも作ってほしいと無茶を言ったが、も、もちろんですと言われた。

 やっぱり、に優しい世界なんだな。

 

 やがて運ばれてきた食事は肉とスープとパンだけという簡素なものだったが、一口食べると思わず――笑顔になった。


「思ってたより美味しいですね。なんか、この前まで死にかけたのに不思議な気分ですが」

「確かに。でも、言葉も通じるみたいでよかった」

「ガウガウウウ!」

「そうか。美味しいかウルフ、良かったよ」


 そしてこれからの事を話し合った。

 まずはこの世界がどんなところなのか、そしてあの国は何で、一体僕たちに何をさせようとしていたのか。


 復讐するかどうかは別として、そ調べておかなきゃいけない。

 おそらく僕たちは死んでいると思われている。それが生きているとバレたら、何をされるかわからない。


 まずは世界について誰かに聞いた方がいいだろう。

 でも、素直に教えてもらえるだろうか。

 ワイルドウルフはお腹がいっぱいになったのか地面にまるまって眠っていた。


 こんなときでも癒される。


「ギャッハハ、全部あたいに任せな! この街は、あたしが仕切ってるからねえ!」

「さすがリッチ姉さん、頼りになりますぜ」

「ですね! ん、俺たちの席に誰かいやすぜ」


 そのとき、後ろから声が聞こえた。

 顔を向けると、いかにも悪そうな連中がいた。


 金髪の女性がボスらしい。かなり露出の激しい服を着ている。

 周りには、屈強な男たちだ。……おそろしい。


 ん、てか、僕たちを見てないか――。


「おいガキども、なにリッチ姉さんの席に座ってんだァ?」


 すると相手は僕たちに絡んできた。今まで少しふわふわしていたのが、正気に引き戻される。

 魔物と違って生身の人間のほうが怖いかもしれない。


 どこかに移動しようとしたら、霧島さんがバンっとテーブルを叩いた。


「ここはお食事処です。それに私たちが先でしたよ。後、マスターにそんな口を利かないでください」

「あぁ!? 何だテメェ!?」

「ふ、藤崎さん!?」


 ちょ、ちょっと勇気ありすぎない!? 相手、ナタみたいな持ってるよ!?

 強依存化ヤンデレになったら、もしかして度胸までつくの!?


 藤崎さんの手を掴んで逃げようとしたら、なぜか、こっちを向いて頬を赤くしていた。


「こんなときに、大胆ですね」


 いや、違う違うよ!? 逃げるためだからね!?


「なにしてんだテメェら!」

「グルグルグルウウ!」


 するとそのとき、ワイルドウルフが起きたのか声を上げた。

 威嚇して立ち上がると、男たちがそれを見て叫ぶ。


「わ、わ、ワイルドウルフだあああああああ」

「な、なんでこんなとこに!?」

「ちょっ、あんたたち! 押さないで――」


 するとリッチ姉さん(多分)が男たちにどんっと押されて僕にぶつかってきた。


 それも、口元付近に。


 ――ガブッ。


 するとそのとき、魔法のエフェクトが光った。


――――――――――――――――――――――

あとがき。

お約束のような、そうじゃないような


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スキル『ゾンビ』を手に入れた僕、噛みつくだけで部下が手に入ると喜んでいたら、強制的にヤンデレ属性が追加されるなんて聞いてませんよ! 菊池 快晴@書籍化進行中 @Sanadakaisei

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