第一章 懺悔室バイト初日に皇帝陛下が懺悔に来ました④
翌日。懺悔室バイト、二日目。
昨日の今日で皇帝陛下は来るまい。今日こそは「ママの大切な
と、懺悔室の扉がノックされた。記念すべき来訪者第二号だ。相手からこちらの姿は見えないわけだけど、やっぱり居住まいを正して「どうぞ」と入室を
「こんにちは」
聞き覚えのあるというか昨日聞きたての声で
うん。昨日の今日で皇帝陛下が来ちゃったよ。
「……昨日の今日ですみません、シスター」
そして本人にも連続訪問の自覚があるらしく、どことなく申し訳なさそうな
「いえ、あの、お気になさらず、毎度ご
慌てて応答すると(
そうだ。二日連続で来るくらいに、懺悔室で話をすることは皇帝陛下にとって意義のあることなのだ。二度目ましての皇帝陛下に
深呼吸をして、お決まりの
「神は
どんな懺悔でも、どんと来いだ!
「兄ふたりと姉を殺したことがあります」
うん……。
これも有名な話で、
「俺はその……今、それなりに高い地位にいるのですが。家族間で殺し合った果てに、
前回と同様、「それなりに高い地位」と、
だから私も一シスターが一市民に接するような心持ちで(いや一市民にこの内容の懺悔をされても全力で
「そ、それは、大変でしたね……」
うっかり
「兄ふたりと姉とはかなり年が
「な、なるほど……」
家族に命を
「シスター。血の
無感動に事実を語るだけだった声に、微かに重さが
「はい。神はあなたをお許しになります」
相手には見えていないと分かっているけれど、つい大きく
「
「……。シスターも俺を責めませんか?」
「もちろんです。むしろ子ども相手に三人がかりで
シスター役であることをうっかり忘れて、ほぼ地で答えてしまった。一市民が皇帝陛下に向かって「褒めたい」など不敬にも
「それは
「あ、いえ、その、神がそう言っておられたので、はい」
あろうことか皇帝陛下を恐縮させてしまった発言の全責任を神様に丸投げする私に、また皇帝陛下は笑う。
「やっぱりシスターは優しいですね。……褒めてもらったのは初めてです」
優しい表情で、
懺悔室バイトをしていたら、皇帝陛下に求婚されました 棚本いこま/角川ビーンズ文庫 @beans
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