第7話 お疲れ様

「おうおう、随分汚れたじゃねぇか!」


ギルドに帰ると、黒鉄さんがからからと笑い声をあげていた。


「強敵がいるなんて聞いてませんよ!おかげで俺達、死にかけたんですからね!?」


「おう、そうか。生きてて良かったな。」


俺達が黒鉄さんに抗議しても黒鉄さんは気にする様子がない。


「大丈夫、あのランクのダンジョンなら、強敵が出てきたって死にやしねぇよ。瞬殺されることもないだろうから、時間がたったら回収しに行けばいい。お前らが学ぶべきことは、予想外に焦らないことだ。これは、強い魔法使いは皆共通して持つ一種のスキル、特に市民を守ろうって時に逃げ出すことはできねぇって学べただろ?」


「やり方が荒療治すぎんだよ……」


「はっはっは、何事も経験だ。さて、今回の給料だが……強敵撃破の報酬も鑑みて、源泉徴収も含め……四万円ってとこかな。」


「四万円!?」


二時間で四万円という事は、時給は二万円。三人で分けても時給は六千七百円程度だ。


「多くて驚いてるか?最近は国からの支援も潤沢だからな。まぁ、お前らが命をかけて戦ったことに見合った報酬だ。当然、強い魔物を倒せばこれからもどんどん報酬は上がっていく。まぁ、せいぜい精進することだな。」


「「「はい!」」」


「なんだ、現金な奴らだ。ほら、さっさと帰った帰った。」


黒鉄さんに追い出され、俺達はギルドを後にする。初任務の緊張から解放されて、全員が安緒の息を漏らしていた。


「とりあえず、寮でシャワー浴びて、飯でも食いに行こうぜ。」


染岡の意見に賛同し、俺達は一度解散した。

汚れを洗い流すために、大浴場とは別にある自室のシャワーを浴びる。


─初任務、お疲れ様。


「うおっ!?」


これまで黙っていたゼウスが急に声を出すので、俺は驚きの声を思わず上げてしまった。やはり、体の中に誰かがいるという感覚は慣れないな……


─そんなにびっくりしなくていいじゃないか……


ゼウスも苦笑している。


「いきなり出てくるなよ……それで、何の用だ?」


─ちょっと調べてみて、分かったことがあったんだ。君は、現人神の才能を持っている。でも、同時に器としての資質も兼ね備えていたみたいだ。


「どういうことだ?」


─僕という力を体に宿しているうちに、君は僕の力をだんだんと吸収していく。それこそ、水を吸うスポンジみたいにね……つまり、君が修練を積むことによって、より僕の力を引き出せるようになるんだ。


「それって、ゼウスの力が俺に染み付いていくって感じ?」


─そんな匂いみたいに……


「だってそうだろ。人の体に宿った挙句、脳内からガンガン声をかけてくるんだから。」


─僕も焦ってるんだよ。なんせ、もうロキの襲来までは少ししかないんだから。


「それを阻止するために俺に声をかけたんだろ?」


─まぁ、それそうなんだけど……ところで、お友達を待たせて大丈夫なのかい?


「うわっ、忘れてた!急げ!」


そしてゼウスとの会話を終え、俺は部屋から出る。

学校の最寄り駅に行くと、もうすでに二人が待っていた。


「遅いぞ~風見」


「すまんすまん、鍵が見つからなくて」


本当はゼウスに絡まれて行けなかっただけなのだが、そんなことを言えば異常者とみなされること間違いなしなので、適当な言い訳をすることにした。


「そうか、じゃあどこ行く?」


「焼肉とかでいいんじゃないか?近くの店に食べ放題の所があるみたいだし。」


「お良いじゃん。水無瀬もそこでいいか?」


「はい。」


「良し、そこに行くか。」


そうしてスムーズに店が決まる。と、ここまではよかったのだが……


「上ハラミ10人前と、タン10人前。あと、キャベツもお代わりお願いします。」


気付けば、水無瀬の横には夥しい数の皿の山ができていた。


「うお、なんだこれ……」


「すっご……」


尋常じゃないほどの彼女の食事量に、俺達は圧倒されていた。


「なんでそんな量、胃に入るんだよ……」


「普段はそこまで食べないんですけど、私の戦い方で、武器と体を強化し魔法を使うとなると、かなりの魔力を使うことになります。魔力を使うことは体中のエネルギーを削ることになるので、食事量も多くなるんですよ」


「そ、そうか……」


確かに、水無瀬はたくさんの魔力を使っていたように思える。だが、それだけでこんなに食えるのだろうか?

もしかしたら、本人が気づいていないだけで、もともと食事量が多い方なのかな……


そんなことを考えている間に俺達が頼んだ料理も届き始めた。


「良し、負けないように食うぞ!」


「いや、流石にこの量は無理だろ……」


なんだかんだで、楽しい時間が過ぎていく。俺は中学生時代には部活にも入っていなかったので、こんな風に友達とご飯を食うことに憧れていたのかもしれない。


「おい、どんどん食べないと焦げるぞ!」


「おぉ、そうだったな。」


そして俺達は大量の肉を胃に流し込んだ。

全員が満腹になったところで、店を出る。


「すみません、流石に羽目を外しすぎました……」


水無瀬が俺達に平謝りしている。俺達が食いすぎて、店長から出禁を言い渡されたことを、申し訳なく思ってるのだろう。


「全然いいよ。今度からは、安くて量が多いところを選ぼうか。」


「ああ。それに、俺達もかなりの量食ってたしな。」


「なら、良いんですけど……」


そんなことを考えながら、寮に向かって歩いていく。

夜の道は人が少なくて、満ちた静寂を俺達の声が切り裂いているようだった。心地が良くて、他愛もないことを話してしまう。


─あぁ、この学校に入って、正解だったな。


お金の問題や、住む場所の問題も鑑みず、二人と出会えてよかったと思った。

これからの学校生活に期待を膨らませて、俺は夜道を歩いて行った。








ここまで読んでくださり、誠にありがとうございます。

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また、投稿が遅くなり、誠に申し訳ございませんでした!始まる2学期の準備等で忙しく、中々小説を書くための時間が確保できなくなってしまいました。

皆さんに小説を読んでもらっている身として、大変申し訳なく感じます。

今後もなるべく投稿頻度を早くできるよう精進いたしますので、温かい目で見守っていただけると幸いです!

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現人神の旅路 ─普通の学生だった俺が、神の力を得て。 白福 @shirahuku314159

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