第6話 鎧の騎士が守る牙城、崩落
地に伏す俺達の前で、鎧の騎士は仁王立ちで俺達を見下ろしていた。
玄春たちのパーティーは、初めての依頼で全滅の危機を迎えていた。
「─クレイウォール!」
瞬間、俺達の下の地面が盛り上がった。俺達は塔の最上階まで、染岡が創造した地面で逃げていた。
「なんだあいつ。初めての依頼で出てきていいボスじゃねぇだろ……」
「連絡装置も壊されたし、ダンジョンの出口はあいつが立ちはだかってる。どうやら、あいつを倒すしか帰れないみたいだな……」
「……あの、一つ案を思いついたのですが。」
「ん?案ってなんだ?」
「かなり無茶をしなければいけないんですけど……─、こんな感じです。」
「えっと……それ、かなり賭けの要素が強くないか?」
「いやでも、これしかないだろ。生き残るためなら、しょうがない。」
「えぇ、本当にやるのか、これ……」
そして、話し合いの末俺は上の階に残り、二人は下で、鎧の騎士の相手をすることになった。
「3分、稼げばいいんだよな!?」
「はい、くれぐれも無理はしないで!」
そして、作戦は始まった。
最初は染岡がありったけの武器を作り、上から落としていく。しかし、鎧の騎士は少し汚れが付いただけで、まったくといって良いほどダメージを与えられていない。
「行くぞ!」
手に巨大な斧を持った染岡が鎧の騎士に対して、切りかかる。
鎧の騎士は大剣でうけ止めるが、その隙に水無瀬が火の魔法を打ち込み、ヒットアンドアウェイを繰り返す。
─多分、風見さんが限界まで魔力を溜めれば、鎧の騎士にも無視できないほどのダメージを与えられると思います。でも、あいつは生き残るかもしれないし、避けるかもしれない。だから、私達がダメージを与えながら、時間を稼いで、注意を引き付けます。その間に、魔力を溜めてください。多分、三分もあれば十分だと思います。
─えぇ、あいつ相手に三分も持ちこたえなきゃいけねぇのかよ、大丈夫かこれ……
─一か八か、やるしかないだろ。正直、これが一番勝率を高くできると思う。
という事で、今玄春は必死に魔力を溜めている。
玄春が魔力を溜め終わるまで、およそあと二分。
「うらぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「─居合、星切り!」
二人で鎧の騎士を攻撃し、後ずさりさせる。二人で必死に攻撃すれば、少しはダメージを与えられるようだ。
「……」
─瞬間、鎧の騎士の迫力が変わった。今まで、鎧の騎士は玄春たちを舐めていた。だが、魔力が溜め込まれている今、早く決着をつけないとまずいと感じたのだろう。
そして、鎧の騎士は染岡に対し、全力で切りかかっていた。
「うおっ!?」
間一髪で一撃をよけたが、鎧の騎士の一撃は、地面を軽く抉り、螺旋を描かせている。
「あれに当たったら、ただの怪我じゃ済まねぇぞ……!」
危険な雰囲気を肌でひしひしと感じとったのか、染岡の危機感があおられる。
玄春が魔力を溜め終わるまで、あと一分。
「─フレイムバレット!」
水無瀬が散弾銃のように火の魔法を放つ。
だが、それさえ鎧の騎士を止めるものにはならない。
次の瞬間、大剣は染岡の体をとらえていた。
「グアッ!?」
染岡が大きく吹き飛ばされ、壁に激突する。
「染岡さん!」
吹き飛ばされた染岡の身を案じつつ、水無瀬は鎧の騎士と打ち合っていた。目をフル活用し、見事に鎧の騎士と打ち合っている。だが、徐々に壁に追い込まれている。もう、八方塞がりになる直前だった。
「あぁっ!?刀が!」
鎧の騎士に刀を吹き飛ばされ、水無瀬は膝をつく。
「やっぱり、強い……でも、もう終わりです!風見さん!」
「あぁ、良く頑張った!」
水無瀬が落とした刀を走って取り、上に放り投げると同時に、全力で走って距離をとる。
「今です、一撃を!」
「任せろ!」
そして玄春がそれをキャッチすると、さっきまで練っていた魔力をたっぷりと刀に込めていく。
元々水無瀬が込めていた魔力と、玄春が込めていた魔力。二人分の魔力を受けて、刀身は黒い炎を燃え上がらせた。
刀を振り下ろしながら、重力を受けながら、玄春は全力で刀を振り下ろす。
「─魔剣・レーヴァテイン!」
放たれた全力の一撃は、周囲に爆風を巻き起こした。
砂嵐の中で、水無瀬は必死に魔力を探す。そして─
「嘘……まだ、死んでない!」
そう、鎧の騎士はかなりのダメージを負っているものの、まだ絶命には至っていない。
だが、玄春はさっき出した技の反動で、直ぐには動けない。
鎧の騎士は、玄春に向かって剣を構える。
「おい、忘れんなよ。寂しい、だろうが……!」
─玄春の頭に県が振り下ろされる直前で、鎧の騎士の頭が割れる。そこには、斧を持た染岡がいた。
鎧の騎士の兜の破片は辺りに散らばり、やがて灰となり消えていく。
「ありがとう、染岡!」
「おう、やっと終わったな。」
二人が勝利を喜び、ハイタッチをする。そして、水無瀬が駆け寄ってきた。
「水無瀬、凄かったな!鎧の騎士と渡り合ってたぞ!」
「お前が居なきゃ、勝てなかったぜ!」
俺たち二人が水無瀬のことをほめちぎる。だが、水無瀬は微妙な顔をしていた。
「ん?どうした?」
「いえ、大変言いにくいのですが……」
水無瀬がおずおずと口を開く。
「この建物、今にも崩れそうです。」
「「へ?」」
「鎧の騎士との戦闘、魔法の多用、極めつけは風見さんの一撃……正直、今すぐ脱出しないと、危ないです。」
「いや冷静に分析してる場合かっ!?早く出るぞ……ってえぇ!?」
染岡は出口に向かって走り出そうとするが、上から岩が唐突に落ち、危うく巻き込まれそうになっている。
「どうするよ、これ!?」
「……かくなる上は、こうするしかないですね。」
水無瀬が上を指さす。この塔は真ん中が開いているような形状になっているので、指がさす方向には……空があった。
「「・・・・・・・」」
染岡が耐熱性で分厚く、三人が乗れる程度の大きさにつくった板に、紐で俺達を括り付ける。
そして俺と水無瀬が残る魔力を絞り出すと、板はだんだんと浮いていく。そして、魔力の球体が出来上がった。
「行きますよ!3!2!1!」
ドガァァァァァァァァァァァァァン!
─この日、俺達は爆風で宙を舞うことになった。
塔を突破しようとする板の上で、俺は叫ぶ。
「爆発オチなんてさいってぶるあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
そして、玄春たちの初任務は成功したのだ。
ここまで読んでくださり、誠にありがとうございます。
本作はパロディを多く含むため、了承して楽しめる方のみ読んでいただけると幸いです。
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それではよろしくお願いします!
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