第5話 初めてのギルド、初めての依頼
入学式の翌日、俺達は指定されたギルドの前で集合していた。
「確か、ここで合ってるよな?」
「はい、少し年季が入っていますが、間違いありません。」
「年季入ってるってレベルじゃねぇだろ、これ……。」
確かに、ギルドはお世辞にも綺麗とは言えなかった。
大きな鉄製の扉は錆びついており、看板の文字は掠れていて、まともに読むことができない。
「とりあえず、入ってみるか。」
そう言って、扉を開ける。
─ギィィィィィィ……
「ッ!?」
扉を開けた瞬間、体中に寒気が駆け巡る。
「おい、これ……」
「……」
他の二人も、入り口で固まっている。
俺達は、ギルドに満ちた魔力だけで、威圧されてしまっていた。
「ナッハッハ、こんくらいでビビってんのか!?情けねぇなぁ!」
固まっている俺達に、大柄な男が声をかけてきた。笑みを浮かべているが、ギルドの中にいるどの人間よりも、全身から魔力を放っている。
素人の俺でも、修羅場をくぐってきたのだろうと察することのできるほどだった。
「だが、感じ取れないよりはずっといい。戦場じゃ、油断が命取りだからな。
お前ら、伊邪那美の生徒か?」
「は、はい。」
「やっぱりな。俺はギルドマスターの黒鉄だ。お前らは、ここのギルドに配属されたから、俺の指示に従う事。」
「分かりました。」
「よし、いい子だ。素直な奴は嫌いじゃない。さて、依頼か。今のお前らに紹介できるのは……これだな。」
そういうと、黒鉄さんは一枚の依頼書を俺に渡してきた。
内容は、一般的な魔物の討伐依頼。ダンジョンを探索し、ボスを倒して帰ってくるというものだ。
「危険があったら、すぐにこの装置で知らせること。四番ゲートだ、さっさと行きな。」
そう言って救難装置を渡すと、俺達はすぐダンジョンに行くことになった。
「よし、行くか。」
「初依頼、頑張るぞ!」
そして、俺達はゲートに足を踏み入れた。
目を開けると、俺達は古い塔の中にいた。どうやら、階ごとに魔物と戦闘したりしながら、探索を進めていくタイプらしい。ゲームで例えると、最近リメイクが発売されたぺル〇ナ3のタルタロスと似ている。
俺達が初めてのダンジョンに感動していると、前から獣の吠える声が聞こえてきた。
「グォォォォォォォ!」
俺達が目をやった先には、三匹のグレイウルフがいた。
「いきなり魔物退治かよ!?」
「風見さんは右、染岡さんは左をお願いします。私は真ん中を討伐します!」
「OK、一人一匹ずつだな?」
そして、グレイウルフが飛び掛かってくる。
「よっしゃ行くぜ!─錬金術、創造!」
そういうと染岡は、地面から槍を出し、グレイウルフの胸を貫いて見せた。
「よっしゃ、一匹やり!って、えぇ!?」
仲間をやられた恨みか、もう一匹、グレイウルフが染岡に飛び掛かる。だが、水無瀬が間に割って入った。
「油断しないで下さい!─居合、星切り!」
水無瀬は腰に差していた刀を抜き、炎を纏わせると、グレイウルフを一刀両断した。
「あと一匹か。─ウィンドカッター」
そういうと俺は、闇で強化した風の魔法をグレイウルフに打つ。
風はグレイウルフの体をいともたやすく切り裂いた。
「よし、お疲れ様。みんな、すごかったな。……なぁ、これからの為に、できることを共有してみないか?今みたいに、奇襲が来るかもしれないしな。」
「一理ありますね。」
「じゃあ、やるか。」
三人の会話をまとめると、このようになった。
・風見玄春
風と闇の魔法を操る。
闇が攻撃を強化するので、鋭い風の魔法と相性がいい。
・水無瀬結月
炎と光の魔法を操る。光は防御力にたけており、また本人も居合が使えるので、刀や肉体を強化しながら戦っていくのが主流。
・染岡弘毅
錬金術を使える。材料を使って錬金するか、魔力を材料にして錬金することができる。
普段は地面や壁から作り出すことが多い。また、本人の魔力量も大きく、魔力を材料にしてもそこそこの量を作り出すことができる。
「俺以外、全員二つの魔法持ちかよ……なんか、仲間外れにされた気分。」
「染岡もすごいじゃないか。武器とか一瞬で作れるんだろ?」
「三者三様の魔法で、バランスが取れていると思います。」
「そうかな……」
「とりあえず、ダンジョンを探索しましょう。」
水無瀬の一言で、俺達はダンジョンの探索を再開した。途中で魔物と戦ったり、宝箱を開けたりしながら……最上階までたどり着くことができた。
「やっと、最上階か。あとはボスを倒すだけ……って、いないじゃねぇか。だったら、このまま宝箱の中身を頂いて……」
「─危ない!」
俺は前に出ていこうとする染岡の腕をつかみ、グイッと引き寄せた。瞬間、大剣が目の前を薙ぎ払う。
目の前には、全身が鎧で包まれた、、顔がない剣士が立っていた。
「クソ、よりによって強敵系かよ!?」
ダンジョンには、二種類のタイプがある。
普通の魔物のレベルが高く、探索が難しいが、ボスは他のダンジョンと比べて見劣りするタイプ。
それと、普通に探索する分には楽な強さの魔物が出てくるが、ボスは強いタイプ。
あとは中間みたいのがあるのだが、稀に魔物の強さは普通程度で、ランダムで強いボスが出てくるタイプがある。
これはボスと戦うまでわからないため、冒険者からは回避するように言われている。だが、ギルド側はダンジョンの内部事情などを知らないし、そもそもダンジョンというのが常に中身が変わっていく不思議空間であるため、こういうことはどうしても起こってしまうのである。
「不味い、とりあえず連絡を……」
バキャッッ!
「嘘ォ!?」
俺が取り出した連絡装置を、足元に転がっている石を投げつけ、破壊して見せた。
原始人もびっくりの投石技術である。
「─居合、焔ノ剣!」
戦うしかないと判断した水無瀬が、剣で切りかかる。だが、鎧の騎士に軽々と受け止められてしまった。
「ク、うわあぁ!?」
そのまま下の階に向かって、水無瀬を投げ飛ばす。
「やばい!─ウィンドブースト!」
俺は足元から風の魔法を出し、その推進力で空を駆ける。急降下していく水無瀬を受け止めると、そのまま一番下の階に着地して見せた。だが、鎧の騎士も飛び降りてきて、その重い体で床にひびを作った。
「うぉら!!!」
いつの間にか斧を作っていた染岡が、鎧の騎士をかち割ろうと、降下しながら斧を振り下ろす。だが、鎧の騎士は剣で応戦し、そのまま染岡を吹き飛ばす。
「ッってぇ!」
吹き飛ばされた染岡は、咄嗟にエアバックを作り出し、衝撃を殺して見せた。
「攻撃は効かねぇ。剣も持ってる。おまけに超重い。こんなの、どうやって勝てっつーんだよ……!」
ダンジョンの中心に堂々と仁王立ちする鎧の騎士は、まさしく王の風格を放っていた。
こりゃあ、逃がしてくれそうもない。
玄春たちは、初めての依頼で全滅の危機を迎えていた。
ここまで読んでくださり、誠にありがとうございます。
本作はパロディを多く含むため、了承して楽しめる方のみ読んでいただけると幸いです。
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