第1話 登校

「ほらサクヤ!起きるよー!」

ったく、うるせーなー。職員が部屋へ入室し強引に声で起こす。

「……んぁああ。」

カーテンを開け陽が目に入る。そのまま布団を捌くよう勝手に取り出す。

「ほら!サクヤ!もう8時10分だよ!あと20分で遅刻するよ?ここからじゃ学校まで遠いから間に合わないじゃない。」

気分に合わない騒音と明るさにイライラする。

「チッ。わかったよ。」


自転車へ乗り爆速で漕ぎ出す。

夏のカラカラな日差しが照らされる。全く、今年は異常な猛暑で辟易する。いつになったら、涼しくなるんだか。虫が全身にへばり付くが気にせず汗だくになりながらも漕ぎ続ける。無事校門へ辿り着く。自転車置き場で鍵をかける。そのまま学校敷地内へただ1人掛け走る。玄関で靴を履き替え廊下を走りながら2階の2年D組みを目的に階段へ向かう。階段手前に近付きそのまま2段飛ばしで登る。2階の廊下端へ向かい、ようやく自分の教室に到着した。

ガララッ!

皆グループ内で話しながら先生を待っていた。扉は開けたまま自分の机まで歩く。机の上に鞄を置く。ダラけて席に座る。すると、隣から。

「おはよ。サクヤ。」

疲労困憊のまま返答する力を何とか込み上げる。

「っはよ、渚。」

彼女は国枝渚。全体的に綺麗な顔立ちで、髪型は黒のショート。小動物のように背が低い。入学当初からクラスで一緒になりひょんなことから話すように。恋愛関係じゃなく可も不可もない友情関係。お互い他に友達いないし。

「やけにギリギリだったな。てっきり来ないのかと。」

「ああ、昨日の夜で古文の宿題やり忘れていたのを気づいてな。それから3時まで掛かっちまった。」

「それは災難だな。」

「そうだな。」

途端、前方左の扉が開く。担任の先生が少し眠そうに入る。

「さ、朝礼と日程確認するぞー。」

各々呼応されて席につき始める。


この高校は県内でも有名私立高校である。在学学年数も多くクラスも7つある。勉学にも励み特に部活動は力を入れてる。俺は中学の硬式テニスで全国出場をきっかけにスポーツ推薦で入って貰った。現在もテニス部で活動している。隣の席にいる国枝渚は受験で入り、上位だったのか入学金免除だったそうだ。人前でドライな素振りをする割には賢いのが気に食わない。渚は部活動を何もしていない。親が厳しくて勉強漬けだそうだ。放課後以外はいつも2人一緒に過ごす。何故だか向こうが俺に執拗に付いてくるからだ。

互いに知らない孤独と影を埋めるように。

帰りの終業も終えて各々帰るか部活へ歩む。

さっ、部活だ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

足原サクヤの人生 辻田鷹斗 @ryuto7ryu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ