転生したら使用人の扱いでした～冷たい家族に背を向け、魔法で未来を切り拓く～

11 陰謀組織との遭遇

エリーナの体から溢れ出した強烈な光が街を包み込む中、黒装束の集団が突如として現れた。

彼らの手には奇妙な形をした杖が握られており、エリーナとリュシアンを取り囲むように陣形を作っていく。

「お前たちは何者だ？　邪魔をするな」

集団のリーダーらしき男が一歩前に出て、冷酷な声で言った。その目には、エリーナへの強い敵意が宿っていた。

エリーナの体が黒い霧に反応して激しく震え、制御不能な魔力が膨れ上がっていく。彼女の瞳が完全に黒く染まり、周囲の空気が重く歪んでいく。

「リュシアン、下がって」

エリーナの声は低く、リュシアンは彼女の変化に戸惑いながらも、一歩後ろに下がった。

「エリーナ！　どうしたんだ！？　冷静になるんだ！」

だが、エリーナの耳にはもはやリュシアンの言葉は届いていなかった。彼女の周りに、黒と紫の混ざったオーラが渦巻き始める。

「ふふっ⋯⋯邪魔するな？　誰に向かって言ってるの？　笑わせないで」

エリーナの口元が不敵な笑みで歪む。その瞬間、彼女の体から強烈な魔力の波動が放たれた。黒装束の集団が吹き飛ばされ、周囲の建物が軋むような音を立てる。

「な、何だこの力は！？」

リーダーが驚愕の声を上げる。エリーナはゆっくりと宙に浮かび上がり、両手を広げた。

「もっと⋯⋯もっと力を見せてあげる！」

エリーナの指先から黒い稲妻が放たれ、街路を蹂躙していく。建物の壁が崩れ、地面が割れていく。黒装束の男たちは必死に防御の魔法を展開するが、エリーナの力の前では無力だった。

「くっ、なんだ、この力は⋯⋯撤退だ！」

リーダーの叫びとともに、黒装束の集団は逃げ出そうとする。だが、エリーナはそれを許さなかった。

「逃がさないわ！」

エリーナの目が黒く輝き、逃げる敵の体が宙に浮く。彼女は片手を握りしめ、敵の体を無理矢理引き寄せた。

「お前たち⋯⋯アズマリア帝国のものね。全て吐きなさい！」

エリーナの声には怒りと狂気が混じっていた。彼女の周りに渦巻く黒い霧が、敵を包み込んでいく。

「や、やめろ！　話す、何でも話す！」

リーダーが恐怖に震える声で叫ぶ。エリーナは冷酷な笑みを浮かべ、彼らを地面に叩きつけた。

「さあ、聞かせて。アズマリア帝国の計画を全て」

エリーナの力に圧倒された敵は、すべてを白状し始めた。魔力汚染の実験、ノーヴァリア王国の支配計画、そして魔法使いたちを捕獲しようとした真の目的。全てが明らかになっていく。

「我々は、強力な魔法使いたちを捕獲し、特殊な水晶で操ろうとしていた。その力を利用して、ノーヴァリア王国を支配するつもりだった」

「アストリア王国の人間も捕まえたでしょ？」

リーダーは震える声で続けた。

「そうだ、アストリア王国の魔法使いたちも狙っていた。特に、噂の強力な魔法使いを捕まえたくて⋯⋯情報を得るために何人か捕獲している」

「ふふっ⋯⋯面白い。それって誰のことかしら？　私のこと？」

エリーナの周りの黒い霧が更に濃くなり、街全体を覆い始める。建物が次々と崩れ落ち、地面が割れていく。

「エリーナ、やめろ！　これ以上街を破壊しては⋯⋯」

リュシアンの叫びもエリーナの耳には届かない。彼女は狂喜に満ちた表情で破壊の限りを尽くしていく。

「アハハハッ！　私には力があるのよ！　誰にも脅かされない力が！　私を捕まえるなんて出来るわけないじゃない！」

エリーナの狂気の笑いが街中に響き渡る。彼女の周りには、闇と光が渦巻いている。もはや誰も彼女を止められないように見えた。

黒装束の集団は、エリーナの圧倒的な力の前に為す術もなく、ただ恐怖に震えるばかりだった。彼らの武器は既に粉々になり、魔法も通用しなかった。

「お願いだ⋯⋯もう許してくれ⋯⋯」

リーダーが震える声で懇願する。エリーナは冷酷な笑みを浮かべ、指先から光の矢を放った。

「許す？　笑わせないで。あなたたちこそ、誰を許してきたっていうの？」

エリーナの声には、これまでにない激しい怒りが込められていた。彼女の目に、過去の記憶が蘇っていた。家族からの冷遇、学院での苦難、そして今回の陰謀。全てが彼女の中で渦巻き、更なる力となって溢れ出す。

「私が⋯⋯全てを⋯⋯守るのよ⋯⋯」

エリーナの周りには、もはや敵の姿はなく、破壊された街並みだけが広がっていた。

リュシアンは何とか彼女を止めようと、必死に声をかける。

「エリーナ！　目を覚ませ！　これが君の本当の望みじゃないだろ！」

その声に、エリーナはわずかに反応する。彼女の目に、一瞬だけ理性の光が戻った。

「リュシアン⋯⋯私⋯⋯」

しかし、すぐにその光は消え、再び狂気の色に染まる。

「邪魔しないで、リュシアン。私はただ、みんなを守りたいだけなの」

エリーナの声は震え、悲しみと怒りが入り混じっていた。彼女の周りの黒い霧が更に濃くなり、街全体を覆い尽くしていく。

「もう誰にも、私を止められない。この力で、全てを変えてみせる」

エリーナの姿が、黒い霧の中に消えていく。リュシアンは必死に彼女を追いかけようとするが、霧の壁に阻まれる。

街には依然として光と闇が渦巻いており、エリーナの力は、もはや制御不能なまでに膨れ上がり、この世界の秩序そのものを脅かし始めていた。

「くそっ、エリーナ！」

リュシアンは霧の壁を突き破ろうとするが、その力は彼をはじき返す。彼は倒れた敵のリーダーに近づき、襟首をつかんだ。

「お前たちの水晶は何なんだ？　エリーナを元に戻す方法はないのか？」

リーダーは恐怖に震えながら答えた。

「水晶は⋯⋯魔力を増幅し、操作するための道具だ。しかし、あの娘の力は我々の想定をはるかに超えている。もはや水晶では制御できない⋯⋯」

リュシアンは歯ぎしりしながら、エリーナが消えた方向を見つめた。街の至る所で建物が崩れ、人々の悲鳴が聞こえる。彼は決意を固め、立ち上がった。

「クラウド、聞こえるか？　緊急事態だ。エリーナが暴走している」

通信機を通じてクラウドに連絡を取ったリュシアンは、エリーナを追う。

一方、エリーナは街の中心部へと向かっていた。彼女の周りでは、あらゆるものが崩壊していく。

「もっと⋯⋯もっと力を！」

エリーナの体から放たれる波動は、次第に街全体を覆い尽くしていく。