第30話 健全な話し合い

 スータン水着大会。

 毎月開催されており、美女たちが彼氏などに『綺麗なんだから君は優勝するよ』とおだてられて参加する祭りだ。


 俺が転生するまえの日本では過去の遺物となりつつあるが『マナ・ワールド』では結構な盛り上がりを見せる。


 女性の方にもメリットはあって優勝すると、スータンの領主が差し押さえた様々な物や、各種割引、美の追求のためのスータン公認マッサージ券など好きな物などもらえたり。

 過去に優勝した人の中には『彼氏募集』とステージで発表し、男性陣の争奪戦になったとかならないとか。



 スータンの街中にある冒険者ギルド。

 フレンダの屋敷で一晩過ごした俺達3人は来たくもないが、そこに足を踏み入れた。


 水着大会。といっても冒険者ギルドがかかわっているからだ。


 当事者のフレンダは俺が壊した扉の修理で屋敷に残っている、というか師匠が『すぐに解決じゃまっておれ』と強気発言だったのもある。


 冒険者ギルドのカウンターには上半身にシャツを1枚きた好青年が笑顔で俺達に挨拶をする。



「初見さんかい? 冒険者ならカード。依頼であればこちらを」



 少し周りを観察する、グラペンテの街と違って人数が多い。

 観光客が多いと言う事はそれだけ仕事もあるのだろう、そういえばゲーム後半で隠しダンジョンもあったきがする。

 俺が考え事をしていると師匠が一歩前に出た。



「みておれドアホウ。大会なんぞ参加しなくても交渉でなんとでもなるのじゃ、受付よ水着大会の運営を呼ぶのじゃ」

「ああ、参加者かい? 見た所……限定なんだ。すまないね」



 師匠はいきなり断られた。

 師匠はそのまま固まった。



「いやぁ師匠。限定らしいです。俺としては師匠の水着を視たかったけど、大勢の前に見られるのもちょっと興奮……じゃなくて嫌な気持ちも少しあって。俺も考えていたんですけど残念でしたね限定で」

「…………ライトニングフルバー……」



 まずい!

 師匠が普通に切れた。

 俺は師匠の口、胸、足を全身を使って拘束する。

 もごもご言い出す師匠から魔力のゆらめきが収まった。


 一方流石は冒険者が集まるギルドである、先ほどまでいた受付や他の冒険者の半分が俺達の前から離れていた。



「き、規則なんだ! そ、それと街中で暴れるとこちらもそれ相応の罰則を!」

「もごごごがも! ええい、離すのじゃ。どさくさに紛れてそれ以上胸や尻を触るのであれば捨てていくのじゃ」



 俺は師匠から離れる。

 離れた場所にすすっとノラが寄って来た。



「クロー兄さん昨日から悩んでいたと思ったらそれだったの?」

「ああ。やっぱ嫌というか、見せたい気持ちもあるし」

「ふーん……ねぇボクが出ようか?」

「ん。ノラはまだ優勝むりでしょ」



 しかし、どうするかな。

 クウガ達であれば、アリシアはもちろん、ミーティア。クィルだっている。定番と言えば定番でビキニからスク水なんて物もあったいっ……痛い痛い!



「いっ! ノラ!? 今俺の横腹つねった?」

「どうだろう、記憶にないかも」

「いやあるでしょ!?」

「さぁ」



 なんだろうノラが冷たい。

 別にクウガのヒロインだから俺に冷たくてもいいんだけど、突然冷たくされるとそれはそれで悲しい。



「それより、2階から誰か来たよ」



 ノラがそういうとギルドの奥から体のあちこちが傷だらけの海パン男が出て来た。



「うわ……クロー兄さんに負けないぐらいの変態だ」

「まて、俺は街中であんな格好はしない。ギルドマスターのカイだな」



 俺がノラに教えると、ギルドマスターのカイは師匠を超えて俺の方に顔を向けた。



「おい、そこのボン! なぜオレの事をギルドマスターと言った? 自己紹介したか?」



 うん。不味い失言だった。

 まさか聞こえるとは。ゲームで見た! その変態姿! と教えてやりたい。



「ボンって俺の事だよね。自己紹介も何も俺達は冒険者じゃないし初めてだけど、その独自の姿に日に焼けた肌、筋肉質で体に傷があり、もっこり海パンと言えばスータンのギルドマスターカイしかいないでしょ」

「そうか……オレってそんな有名か……」

「クロー兄さん、ボクの感覚がおかしいのかな? あんなへんたむぐ」



 俺はノラの口を塞ぐ。



「あ? オレの事を変態と言ったか?」

「いってません!! なっノラ」



 ノラは口を塞がれたまま頷くとカイは何度も頷く。



「で、変人のギルドマスターお主が水着大会の責任者か?」

「な! オレの事を変態と!? 変態じゃなくて変人じゃ」

「………………ならいいか」



 いいのかよ! と心の中だけで突っ込む。



「水着大会の景品であるマリンダのカードを返すのじゃ」

「………………君もか。残念でがそれはできん! 占い師マリンダ、その占い師が使っていたいたカードは希少価値が高いんだ。それにこちらだって奪ったわけじゃない。正式な手続きで買い取ったのだよ、フレンダ君がこの街で飢えないように暮らす、そのための条件だ」



 どうだ! といわんばかりに胸をはるカイ。

 皆がカイをみているが、俺はビキニパンツに目が行く、でかいな……俺もそこそこ大きいと思うがカイも中々の大きさだ。



「市税の支払いじゃろ。代わりに払えばいいのじゃ。まったくマリンダはその手の事は直ぐに投げ出したからのじゃ」

「金額の問題ではない、一度こちらに来たのをホイホイと売っては今後の事にもつながる」



 うん。正論だ。



「そんなに欲しいのであれば、大会に出て優勝すればよか……すまない」

「ワラワが優勝出来ない! と思っているようじゃな!」

「受付が何を言ったか想像は着くが、少女達の水着大会で君が出るのか?」

「……」

「マニアには受けはいいだろうが、恥ずかしくないなら手続きはするが」



 姿とファッションこそ変人であるが言ってる事は凄いまともだ。あの師匠が何も言えない。



「師匠諦めましょう」

「ドアホウ……だけは味方と……いや、まてなのじゃ……ノラ、こっちにこいのじゃ」

「はいメル姉さん」



 ノラはとことこ歩くと師匠の横に立つ、師匠はそのノラに何かを耳打ちしたようで目を見開く。



「わかりました。ボクがんばります!」

「君は……女の子だね」

「すごい、ボクを見て女の子ってわかる人少ないのに、応募します!」

「じゃぁこの紙に名前を書いて」



 ノラが紙に名前を書くとカイに手渡した。

 カイは出場表を見ては頷いて師匠の顔を見る。



「おいおいおいおい、君本気かい?」

「当たり前じゃ……面白いじゃろ?」



 会話の流れからいってやっぱり師匠はでるのか、周りが少女ばっかりで師匠もよっぽど切れたんだな。



「わかった。別に規約にはその変は書いてないしいいだろう、水着大会も最近マンネリでね。時にはこういう趣向も面白い、ではくれぐれも街中で騒ぎは起こさないでくれよ、魔法使いメル」



 え? こいつ師匠の名前を。



「んなんじゃ、知っておったのじゃ?」



 師匠の方は別に驚く事もしなく淡々と聞き返した。



「オレはマリンダに恩もあるしマリンダの話を聞いていたからな。ギルド無所属の銀髪の魔法使い。まさか本当にいるとはな」



 それだけいうとカイはギルドの2階へと帰っていく、俺達を担当していた受付も「じゃそういう事で時間厳守だけはお願いします」と別の所にいく。


 師匠とノラは俺の所に戻ってきて一緒にギルドから出る。



「で、師匠これから何を? ノラも出るんですよね……勝ち目あると思いますか?」

「ドアホウ……ノラは原石じゃよ、みがけばみがくほどじゃ、少しはワラワ以外の女にも興味持った方がいいのじゃ」

「なるほど、ごめんノラ」

「いいんです。クロー兄さんはメル姉さんだけを見てるようでボクにも気にかけてくれてますし」



 そんな事ないんだけどなぁ。


 ノラの水着を買おう、って事で湖近くの水着屋に来た。男の俺としては師匠達が呼ぶまでは待機だ。



「ドアホウこっちに来るのじゃ」

「なんです? ノラの水着選びなら俺よりも師匠のほうがいいかと、もしかして師匠が着る奴の相談ですか。であれば! このハイレグなんてどうです? ギリギリ見えません。やっぱ若い子に勝つにはお色気です、このTバックはどうでしょう」



 師匠の手には黄色いビキニと。白いスク水タイプの二つがある。



「何を言っているのじゃ、ドアホウ。お主が着るのじゃ」

「ん?」

「ん??」



 俺と師匠がお互いに疑問符を付けた。



「ああ、そういえば言ってなかったのじゃ。今回の水着大会、ノラとドアホウ2人が出るのじゃ……なんせワラワはにはまけるからのう、ドアホウは若いじゃろ?」

「え、いやでも俺はおと……」

「安心しろなのじゃ、許可はとってあるのじゃ」



 俺は逃げ道を探して後ろを店内をぐるっと見合わす、背後にいたノラと目が合った。



「ボクとがんばりましょう。!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

負け悪役貴族に転生した俺は推しキャラである師匠を攻略したい えん@雑記 @kazuna

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ