砂漠の街

第29話 未来師マリンダの手紙

 物凄く振動がすくない馬車に揺れられて6日目スータンの街についた。


 乾燥地域にある大きな湖。その周りに発展させた砂漠の街で近くにはピラミットがある。

 敵はまぁまぁ強いが比較的平和な街だった気がする。

 ここまで運んでくれた御者に別れを告げると俺は一呼吸吸う。


 俺はスータンの街の前で両膝をつく、手を組上空にあげ神に祈るよなスタイルだ。



「ついたぞおおおおおおおおおお!!!!」

「…………クー兄さん!?」

「ドアホウ……それ毎回するのじゃ?」



 俺は二人に振り向く。



「毎回やれば習慣になるかなって……初めての街だし」

「で。ここでの有名はなんじゃ?」

「ピラミット!」

「うん、クロー兄さんそれはボクもみえてるよ」



 ノラの言う通り街の反対側にピラミットのてっぺんが見える。隣にはスフィンクスらしきものはないが中々の大きさだろう。



「じゃぁ水着コンテスト」



 俺はピラミットに負けない師匠の山を二つ見てイベントを伝えた。



「ワラワの胸を見ながら水着コンテストの話はアリシアと何が関係あるのじゃ?」



 ちょっと怒ってる。

 そりゃ関係ないけど、スータンのメインイベントだよ? ちょっとは息抜きイベントあってもいいじゃない。



「ふう、さすがのドアホウもスータンの街には詳しくないようじゃな、どうせ知り合いもいないんじゃろ?」

「え。まぁ……特には」



 詳しくないか……ええっと攻略ページのイベントではそこそこあり例を上げるとだ。


 水着コンテンスト。

 若い貴族の娘フレンダと連続イベ遭遇。

 若い貴族の娘フレンダと空白の一夜。

 朝帰りのクウガ。

 ピラミットの観光。

 暗殺忍者の撃退。

 超ビキニの購入に金貨1万。

 聖なる湖の中心で待つ者。

 ハヤブサの腕輪。

 金と偽金。

 幽霊騒ぎイベその3。

 やくそう早食いやけくそう対決。


 これぐらいしか覚えてない。



「で、師匠は知り合いがいるんですか? ってか師匠って知り合いっていうか友達いるんですか」

「……占い師マリンダそいつにアリシアの行き先を占ってもらえばいいのじゃ、ノラ着いてくるのじゃ」



 友達の部分は無視された。

 そんな人いたかなぁ……まぁ俺もゲームの全て知ってるわけじゃないし師匠が言うなら要るんだろう。



「高いんじゃ?」

「ギルドよりは安かろう」



 ノラがうんうんと頷くと「ギルドは高いもんね」とあいづちをうつ。確かに毎回金貨20枚も30枚も払っていたら直ぐに赤字になる。


 入場料を支払い街中へと入る、全体的に軽装の人が多い。

 男女ともに肌の露出が高く、上半身裸の男性もいるぐらいだ。

 今までの街よりも活気があり、笑い声が絶えないのは治安が言い証だろう。



「で、師匠の言う占い師は」

「こっちじゃ」



 師匠がどんどん歩くので俺もノラもそれについて行く。

 繁華街から一般地区にいき、そこから大きな屋敷が多い場所へと着いた。


 2階建ての屋敷の前で師匠の足が止まった。



「ここって」

「占い師マリンダの館じゃ」

「クー姉さんお化け屋敷にしかみえないよ」



 ノラがそういうのも無理はない。

 立派な外見なのに建物に灯りは無く庭は砂漠地方もあって土しか見えない。かろうじて噴水の後があるが水は止まっているようだ。



「なに、変わった奴だからじゃ」



 師匠を先頭に玄関の前につくと大きな扉が俺達を威圧する。

 俺がノックをしてみると内側にバタンと大きな音を立てて扉が倒れた。



「げっ」

「ドアホウ……」

「ちがっ! 壊れてたんだって。ほらここ! ここみて! 壊れてる、壊れてるよね!?」

「クロー兄さん、メル姉さんまって誰か来る!?」



 昼間というのに屋敷の中は暗い、その暗がりから一人の少女がロウソクを片手に歩いてきた。

 砂漠地方というのに透き通るような白い肌、髪も長く水色の色だ、瞳は切れ目で物凄く細い。



「ゆ、幽霊!? メル姉さん! クロー兄さん!?」

「あー…………ノラ、あれは大丈夫」

「で、でも!?」

「小娘はどこじゃ?」

「マリンダはいません、孫のと申します」



 スータンの街で会うヒロイン候補。

 広い屋敷に一人で住んで祖母の遺品を探している少女。


 彼女の祖母の遺品はいくつかあり、水着大会の商品にもなっている。クウガは男なので参加出来ないので仲間を参加させては優勝を目指すイベントだ。


 親密になっていくと、デートイベントがあり足をくじいたフレンダを屋敷に送るイベントが発生する。

 そして謎のBGMと共に画面が暗転し一晩が過ぎる、朝帰りのクウガの誕生というわけだ。


 一連のイベントが終われば連れて行く事も出来るし街に残す事も出来る。


 ノラよりはイベントの多いキャラ。



「クロー兄さん。ボクの事何か変な感情でみてませんか?」

「ゼンゼン」



 フレンダは俺達を見ると何かを考えるように固まる。

 喋ったかと思うと口調がゆっくりだ。



「マリンダは死にました」

「………………すまぬのじゃ、知らなかったのじゃ」

「いいえ」



 師匠はポケットからマジックポーチを出すと金貨をジャラジャラと手に出した。



「かの地では死者に金を送ると言う風習があるらしいからのう、マリンダとの約束じゃ受け取ってくれなのじゃ」

「…………あの、この手紙を」



 フレンダは俺達の前に3通の手紙を出してきた。

 年代物らしく少し茶色く変色しているのが見えた。

 俺達は顔を見合わせる。


 それぞれの封筒に師匠、俺、ノラの名前が書いてあるからだ。



「ええっとフレンダ。って言ったよね俺達って初対面だよね?」

「はい、たぶんメル様ですよね、それと貴方が……クロウベルさん。そしてノラさん全員が初めて会います」

「っとこの手紙は誰が?」

「マリンダです。今日この時間に来るから手紙を読ませろ。と……」



 会った事もない。

 ってかゲームの中でも知らない。



「マリンダは未来さきを視る事が上手かったのじゃ」

「未来?」

「あまりに当たり過ぎて嘘を混ぜるほどなのじゃ」



 フレンダから手紙を受け取る。

 師匠もノラもそれぞれ手紙を受け取った、俺は封を切ると中身を読む。



 ――親愛なる友人のストーカー君へ。『マナ・ワールド』の世界は楽しいかな、君の望んだイチャイチャを堪能しているようだね、親愛なる友人は口では嫌がりながらも君の事をよく思っている。

 それと不死の件は頑張れば君なら出来るかもしれない、キーは聖女だよ。安心したまえこの手紙は直ぐに消える。



 ……………………これは、いや……俺の事を知ってる。いや、知ってた? え、手紙消えないんだけど。



「ドアホウ何を書いてあったのじゃ?」

「うわあああああああああ!」



 俺が大声をあげたので師匠が驚きだした。



「のおおおおじゃ!?」

「師匠! 人の手紙を見てはいけましぇん!」

「……悪かったのじゃ、全員が同じ文面かもとおもってなのじゃ」



 師匠がしゅんとする。

 流石に全部は見せる事は出来ない。



「わかりました、内容だけなら。師匠は上の口では嫌がっていても体は正直だって」

「ライトニング」

「あばばばばばばばばばばばばばばば!」



 俺の体に電気がながれると、手に持っていた手紙が消し炭になった。



「なっすまぬ。占い師ミランダの大事な手紙を燃やしてしまったのじゃ……だ、大丈夫なのじゃ? 役に立つことが書いてあったに違いないドアホウは馬鹿だから内容覚えてないじゃろ?」



 あばば――やっとしびれが収まってきた。



「いやそこまで馬鹿では……別に本当に俺の手紙は師匠をよろしく程度しか書いてませんでしたよ。忘れるというか覚えるほどの内容じゃなかったですし、ノラは?」

「クロー兄さんの倒し方かいてありました」

「……まじで?」

「はい! ですから絶対にみせません!」



 何て言う物を残しているんだ。



「あの…………手紙。読み終わりましたか?」



 フレンダが俺達に確認してきた。

 あまりに静かで存在を忘れる所だったよ。



「それで……助けてくれるんですか?」

「そうじゃのう、ワラワが貰った手紙ではワラワが来るのが遅いから孫のフレンダが可哀そうな事になった。と恨みつらみが書かれて最後にフレンダを助けてやってくれ。と……何が困っているんじゃ?」

「水着大会です…………祖母の遺品が商品にあるんです……取り返したいです……」

「マリンダ! 出かした!! これで師匠の水着が見れる!! たゆんたゆんのぷるんぷるんだ」



 俺が大声で叫ぶと3人の女性から軽蔑された目で見られたような気がした。

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