第5話 「真実の姿」

エレナはドレス工房での生活に慣れ、新たな自分に自信を持ち始めていました。

ある日、工房に撮影のためのカメラマンとアシスタントがやってきました。


撮影が終わった後、エレナは控室で撮影用のドレスを脱ぎ、私服に着替えました。

彼は機材の片付けをしていたが、ふとドアから出てきたエレナが窓の外を眺めているのを見て、話しかけることにしました。


「今日はお疲れさま。良い表情だったよ、エレナ。」彼は明るい笑顔で言いました。


エレナは少し驚いた様子で彼を見ましたが、その優しい目に安心し、微笑んで答えました。

「ありがとう。まだ慣れないけど、少しずつ楽しめるようになってきたかな。」


彼は嬉しそうに頷きました。

「そう感じるよ。表情がどんどん自然になっているし、カメラの前で輝いているのがわかるんだ。」


エレナは照れくさそうに笑いながら、

「そうかな、ありがとう。ところで、あなたカメラの修行中なの?」と尋ねました。


彼は少し照れた様子で答えました。

「あぁ、そうなんだ。写真を撮るのが好きで、カメラマンを目指しているんだ。でも、まだまだ勉強中でね。アシスタントとして勉強させてもらってんだ。」


エレナは興味深そうに彼を見ました。「へぇ、そうなんだ。どんな写真を撮るの?」


「いろんなものかな。でも特に人の表情を撮るのが好きなんだ。なんか、その人の物語が一瞬の表情に表れる感じがしてね。」彼は熱心に語りました。


エレナはその言葉に感心し、彼がどれだけ情熱を持っているのかを感じました。「それ、素敵だね。私も最近、自分の表情や感情をどう見せるかっていうのを考えるようになったんだ。」


彼は興味津々に「いいね!どんなことをしてるの?」と尋ねました。


エレナは少し考えてから、「例えば、今日は少し勇気が出なくて緊張してたんだけど、カメラの前ではちゃんと自信があるように見せたくて、ドレスを着たらどれだけ幸せな気持ちになるのかが伝わるくらい!カメラに目線を合わせて最高の笑顔でいようって」


彼は真剣な表情でエレナを見つめ、「うん、ちゃんと撮れてたよ。それに、自然な笑顔だった。自身がある女性って素敵だと思うよ。」


ノア「自己紹介が遅れたな僕はノア。よろしく!」


「私はモデル見習いのエレナよ宜しく!」



ノア「あの、お仕事で忙しいと思うんだけど… よかったら、飲みに行かない?」


エレナ「いいわね!お祭りもあってる事だし、い行きましょう」


彼は驚いた様子で少し目を見開きましたが、すぐに優しい笑顔を浮かべました。


「エレナ、良ければそのお祭りで、君をモデルにして写真を撮ってもいいかな?」


ノアは遠慮がちに尋ねてきた。

エレナは自分がカメラの練習になれるならと喜んで受け入れた。

「私でよければもちろんよ!」


彼はニコニコしながら「じゃあ、行こうか」

エレナも「うん、楽しみね!」と答えました。


一瞬着替える為に部屋に戻ったエレナは思い出します。

彼は柔らかな黒髪で、光の加減で少し青みがかった光沢。前髪は自然に額にかかるくらいの長さで、全体的に無造作に整えられていた。

青い瞳が知的で優しい印象を与え、目元にはほのかな笑い皺があり、微笑んだ時の人懐っこい雰囲気。


「お待たせ!」


「エレナ!」


そのまま祭りへ向かった2人は、賑やかな音楽やパフォーマンスに目を輝かせていました。


屋台には料理が並び、香ばしいパンやソーセージ、チーズが人々を誘っていました。レオンは微笑んでエレナに「何か食べたいものはある?」と尋ねました。エレナは少し考えてから、「あのチーズフォンデュ、すごく美味しそうだね」と指差しました。


二人はチーズフォンデュの屋台に立ち寄り、香ばしいチーズの香りに包まれながら、熱々のチーズにパンをディップして楽しみました。

レオンはエレナの頬にチーズが少しついているのを見て微笑み、

「ついてる」と優しくハンカチを渡しました。

エレナは恥ずかしそうに笑いながらそれを拭い、二人は笑顔で会話を弾ませました。


広場の中央では、仮面舞踏会が開かれていました。美しいマスクとドレスを身に纏った人々が踊る中、エレナとレオンも仮面を手に取りました。エレナは繊細なレースのマスクを、レオンはシンプルな黒のマスクを選びました。彼らは少し照れながらも、お互いを見つめ合い、その場の雰囲気に浸りました。


音のなるまま気の向くまま、2人は踊りました。

目が合う度エレナの心はくすぐったい気持ちになります。


そして、美しい街並みと賑やかな祭り、楽しむエレナの姿をノアは写真に収めました。


「まるで別の世界にいるみたいだね」とエレナが言うと、ノアも

「うん、素敵だね。この瞬間がずっと続けばいいのに」

と返しました。彼の言葉にエレナは心が温かくなりました。


広場では魔法花火が打ち上げられました。

夜空に広がる鮮やかな光のショーを見上げながら、エレナとノアはその美しさに見とれていました。花火の光が彼らの顔を照らし、エレナはその瞬間がまるで夢のように感じました。ノアもまた、エレナの横顔を見つめ、彼女と過ごすこのひとときが特別なものだと感じていました。


祭りの喧騒が少しずつ静まっていく中、二人はゆっくりと歩いていました。

「今日はありがとう!

すごくいい写真も撮れたよ」


「へへ、私なんかがモデルで大丈夫だったかな」


「とても魅力的だったさ!よければこの写真を今度のコンテストに出してもいいかな?」


ノアはその後も写真の魅力について話し続けていた。私もそれを聞くのがとても幸せだった。



祭りから自宅に戻ったエレナは、心地よい疲れと共にその日の楽しかった思い出を振り返っていました。ドレス工房の地下にある彼女の部屋は、祭りの余韻を残したまま静寂に包まれています。彼女はお風呂で汗を流し、祭りの興奮を少しずつ冷ますために、湯船にゆっくりと身を沈めました。


「ノアのコンテストいい結果だといいな」

お風呂から上がり、タオルで髪を拭きながら鏡の前に立ったエレナは、ふと違和感を覚えました。鏡に映る自分の姿に目を凝らすと、そこには以前のエレナの姿が映し出されていたのです。美しいピンク色の髪と洗練された容姿は消え去り、祭りの中で輝いていた新しいエレナではなく、昔の内向的で控えめな自分がそこにいました。


「えっ...」

エレナは鏡に映る自分の姿を見て、驚きと困惑の声を漏らしました。目の前の変化が信じられず、何度も鏡を見直しましたが、現実は変わりません。心臓が激しく鼓動し、恐怖と不安が彼女を襲いました。


「どうしてこんなことに...」エレナは呟きながら、震える手で鏡を触れました。まさかまた自分が元の姿に戻ってしまうなんて想像もしていませんでした。彼女は祭りでの楽しい時間や、ノアとの甘いひとときを思い出し、その全てが遠ざかるような気がしました。


エレナは急いで自分の顔を確認し、手に触れ、確かめようとしました。しかし、すべては変わらぬ現実でした。彼女はショックと恐怖に打ちひしがれ、涙が頬を伝いました。せっかく新しい自分として得た自信や喜びが、一瞬にして消え去ったかのようでした。


セレスティアのドレスをきた時は一瞬だったから気にも止めてなかった...

まさかもう私戻れないの?またこの姿のまま生きていかないといけないの?!


「いやよ、、、そんなのいや!!!!!」


ガシャーン!!!!


魔法の力でガラスが割れ、部屋のものが宙に浮き出します。



コンコンッ

「エレナ??大丈夫なの??」


ハッ!!!!!

お願い戻って、戻って!!!!


「開けるわよ??」


ガチャッ


もう終わりだわ、もうここでは生活できない、、


「エレナ!!!」


先輩が駆け寄って私を抱きしめる。


散らばったガラスの破片からピンク色の髪が見えた。エレナはフッと意識を失った。

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エレナのために 日菜森 @hinamori_0913

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