傾国の王女

 人生とは思わぬ方向に転がることが多々ある。

 一週間前、俺はついに俺TUEEEE展開を行うことができた。

 しかしその代償はデカかった。


 なんかこの国では15歳になると能力診断の宝玉があって、それを使って能力を診断することができるらしい。

 例えば「無限の魔力」であったり「回復の手」や「幻惑の瞳」、そしてクレアの言っていたユニーク魔法「再生」もそうだ。

 つまり何が言いたいかっていうと、海斗のヤツがそれを使ってみたら見事に俺に提示されたチート能力の全てを持っていたってこと。

 そしてついでに俺も使わせてもらったら「翻訳こん〇ゃく」とかいうどこかの秘密道具的な能力だけを所持していた。ふざけやがって。


 だが俺は海斗という戦闘奴隷を手に入れたのだ。

 自分の天才的な頭脳を用いて配下TUEEEEをする方向にシフトチェンジすりゃいい。

 いやぁ、それにしても一週間前に海斗が無双した日はよかったな。貴族共はみんな手のひらをドリルに改造してグルングルン手のひら回してたからな。

 それで金でも掘って来いよ、って言いたかったね。


「アリシア様、終わりましたよ」


 クレアの言葉を聞いて俺は自分を鏡で見る。

 めっちゃ可愛いな。これが俺じゃなければ追いかけて求婚したいくらい可愛い。俺じゃなければ。

 いつかこの顔でバベルの塔を生やして、クレアやリリィと良いことするんだ。

 想像しても興奮できないが、きっとバベルの塔が建築されれば興奮できる。今はそう信じておこう。


「では、行きましょうか。勝利の記念式典です」


 そう、そしてこの勝利は人類にとって希望だった。

 海斗の圧倒的チート能力で、初めて圧倒的な勝利を収めた人類は、俺を祭らずにはいられなかったというわけだ。

 また一つ、歴史に名を刻んでしまったな。


「アリシア様、祝賀は覚えてますか?」


 と、歩きながらクレアが確認してくる。


「たぶんね」

「大丈夫、アリシア様ならしっかりやれますよ」


 昨日一日使ってこの後の勝利スピーチを覚えさせられた。

 なにせチートがなくて文字が読めないもんだから、考えてもらった祝賀を全て読んでもらって日本語でメモを取るという何とも面倒なことをやったわけだ。

 ちなみに日本語の言い訳は『闇のフレーズ』とか言ってごまかしておいた。海斗に見られたらやばいな。


「さて、こちらです」


 そういわれて、庭が見渡せる城のバルコニーへと案内された。

 うーむ、壮観だな。庭に所狭しと人が集まっていて、王様になった気分だ。

 あ、女王だから間違ってないな。

 そして俺の言葉を待って静まりかえっている。

 ふ、俺はいま世界の頂点に君臨しているのかもしれない。

 まあそれはいったんおいておいて、祝賀を言っておくか。


「多くの人が亡くなりました――」





「これからがわれらの反撃の時です!」


 そうして祝賀を終えると、アリシアコールが始まった。

 ふ、気分が良い。そうだ、もっと俺をほめるんだ。

 ククク、これこそ俺の求めた異世界転生。

 うーん、最高だ!


 と、俺の隣にクレアが立つ。

 ん?

 あれ、これで終わってパーティーするんじゃないんだっけ?

 おいしいものを食べるって言ってたような。


「ここで皆さんにご紹介します。勇者カイト、来てください」


 え?

 なんで海斗が俺の横に並ぶわけ?

 クレア、どういうこと?

 確かに海斗のヤツは国に大きな貢献をしたわけで、なんならゲストとしては一番いい位置に置くのはわかる。

 でも俺の横……ああ、そうか。俺が召喚したってことになってるからだな。


「勇者カイト、何か一言お願いします」

「おう、俺がいるからには人類は安泰。ここから反撃に向かうぜ。このアリシアと共にな」


 そういって海斗は俺の地肌が出た肩に手をまわす。

 こ、コロス……だが、式典の最中……さすがに手を払うのはまずいだろう。さすがの俺でもそれはわかる。

 何しろこいつは俺に次ぐ英雄なのだ。当然だが、こいつを召喚した(とされる)俺が一番だけどな。

 海斗の言葉に続いてクレアが続ける。


「そして……勇者カイトはこの国の王になるのです!」


 ……へ~、王になるんだ。

 ちょっとまて!!!

 俺は!?

 俺はどうなるの!?

 俺、王女。俺一番。俺えらい。


「ちょ、ちょっとクレア!? お、私は!?」

「え? アリシア様、一週間前に言っていたではありませんか。勇者カイトとご結婚なさると」

「は、はあああああ!???」


 そう、人生とは思わぬ方向に転がることばかりなのだ。



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異世界転生したら傾国の王女!?~人類最後の砦の国を最強メンタルで救う~ @honebuto

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