相合傘
糸花てと
第1話
しとしと、降り続く雨。それと、傘。その二つの事柄はいつも、あいつとの思い出に繋がる。
幼稚園のとき、あいつはいつも傘を忘れる。親は持たせようと必死だったのを覚えてる。どんなに濡れても風邪をひかないんだから、すごいよねってなぜか盛り上がった。
小学生のとき、小雨のときは傘を持ってこないあいつ。よく走って帰ってるのを見た。
中学と高校は自転車だったから、傘を必要としなくなった。
ちいさい頃は、小さい傘に二人で入って帰ってたね。
小学生になると、黒板に相合傘を描くのが流行ってて、注目されるのを避けるためにお互い何も言わなかったね。
中学では話すのにきっかけを探してたんだよねー。
あいつはどう考えてたのか知らないけどさ。
降り続く雨、空を見て立ち尽くす人がいた。傘を忘れたのかもしれないね。
「あれ、ここで何してんの」
「おー、久しぶり。傘、車にあってさ。急に降ってきただろ」
「梅雨なのに。折りたたみ傘くらい持っときなよ。走って車まで行けば?」
「この年齢になって、それはアホすぎるだろ」
あたしの手から傘を取ったと思ったら、「近くまで入れて。どこのコインパーキングに停めた?」
「この建物の裏」
「まじか、同じだわ」
いつ振りなんだろ。相合傘っていうのを気にして緊張してくるのは、内緒にしよ。
相合傘 糸花てと @te4-3
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