エピローグ
あれから僕は小説家になった。
あのとき、彼女に自分の思いを告白していたら…、そんなことを考えたところで戻ることはできない。
『春時雨』
僕のデビュー作の名前だ。
春時雨とは、春、晴れていたのにも関わらず、急に雨が降ったり、止んだりする通り雨のことである。
*
「なぜ、この言葉を題名にしたんですか」
僕が小説家になって初めてのサイン会の日、1人の女性から質問された。
「僕の人生に大きな影響を与えた人の名前が、春時雨の中に入っているからだよ」
少し照れくさかったが、正直に答えることにした。すると、なぜだか目の前の女性の顔がみるみる赤くなっていったので、僕もなんだか恥ずかしくなってしまう。
「あの…サインに、な、名前を書いてもらってもいいですか…」
「もちろん、お受けしますよ。お名前おしえてください」
「春野 雨です」
*
『「」の春時雨』
僕の春時雨は彼女との出会い、そして、別れだった。
また、いつか、春時雨になればいい。
でも、次は春時雨じゃなくて、長い長い雨がいい。
「 」の春時雨 皐月 @hyang_rina
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