魔王。取りあえず喰わせろ(物理的に)

柚木 彗

本編


「―――は?」



「取りあえず喰わせろ。」



「何を?」



「んなもん、決まっているだろうが。」



 いちいち言わせるなよ。


 等と頭の処理が追い付かないようなことを言った、目の前の初対面?のはずの勇者――…






 つい先程、この魔国の中央に聳え立つ魔王城…。


 周囲が林檎畑やら寒冷地でも育つ丈夫なトウモロコシ畑やら、人間が住む国よりも北の寒い国にある魔国。


 国土はやや高地にあり、更には真冬には沢山の雪が積もり積もる。そんな極寒の地故、余っている土地は無理矢理にも畑にしてしまえ!と。


 ココ数年でやけに転生者やら移転者やらが魔国に何故か移住し、ドンドン畑を耕して行ってしまい…無論許可はしてある。が、我ら魔族には無い知恵やら何やらで、気が付いたら今迄無かったヤケに甘い林檎やら白いトウモロコシ、更には寒冷地に強いイモ類や収穫した人参や野菜類を態々雪の中に埋め、甘みを増し…等。


 今迄魔国には無かった技術を作り出し、等々移転者やら転生者が逃げ出した人間至上主義の国から宣戦布告のようなものを受け。




 ハイハイワロスワロスと鼻で笑っていたわけでは無いが。


 無謀だなぁと思ってしまったのは事実。


 何せ人間至上主義の国は魔国と隣接しては居る。だが他にある他国―…人間至上主義の王族や貴族達は亜国等と意味不明なことを言っているが、他国である獣人が住む国やドワーフ国に滅多に顔を出さないエルフ王国、龍国、多種族だろうがどんと来い!な色々な多種族が犇めき合っている倭国等に何を血迷ったのか、共に魔国を倒そう!等と声高に宣言し。


 見事にすべての国々にスルーをされた。


 いや、だって少しは考えろよ、オツムが足りないのかお前ら。


 何故かと言うとつい数年前に獣人の国に一方的な宣戦布告…「獣人の国土は我ら人間至上主義の国、だから取り返す」等と無茶苦茶で身勝手な言い分をし、見事に玉砕。


 しかも笑ってしまうことに、開戦して速攻で瞬殺。

 つまりボコボコにされたのだ。

 何処がって当然人間至上主義の国が、だ。



 ―…いや~アレは見事だったなぁ。獣人側の援軍として私達も現場から見ていたが、あっという間に人間が何十、何百とボンボン戦場の宙に浮くのは何というかチョット…哀れ過ぎて、魔王のおいちゃんってば泣きそうになっちゃったヨ。


 ホロリとしちゃったよ。

 無論同情だよ。


 あれ、かなりの人族が降りた瞬間ゲロって吐いていたな…。

 戦場が血みどろスプラッターな現場ではなく、ゲロと絶叫の阿鼻叫喚地獄ってさ…。


 しかも完全に獣人達に手加減されていて、敵として向かっていく者には容赦なく優雅な空中散歩。実際は獣人達による人間お手玉。


 しかも宙に飛んだ後は上手く降りられないだろうからと、獣人達自らの抱擁付き落下。




 一部獣人から「滅茶苦茶好み!」と言う声のあと、何故か一部人族の服が空中に散乱して絶叫が聞こえた気がするが、おいちゃんはスルーしたよ。

 人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られるって言うから。

 それ以外は戦場が何処のサーカス開催ショーかと思ったよ、魔王のおいちゃんは、さぁ。



 しかも飛ばされて居る人間達の背後、遥か後方の物見櫓の上で激怒して怒鳴り声を上げている猿…いや、あれは肥えた豚か?それともオーク?


 人間のオークなんて初めて見た。


 そいつがその場で地団駄を踏んでいて、魔王のおいちゃんの横に居たオークジュネラル、魔王であるおいちゃんの部下ね?そのオークジュネラルが、「アレ、食ったら凄く旨そう。魔王食っていい?」って涎を垂らしながら聞いてきた。




 って、そうか。


 この食うか!






「いやいやいや、勇者よ。おいちゃんを食っても旨くないから。」



「ふぅん…巧く、ね。」



 何だか語尾が違うような、発音が違うような…。


 美味しくは無いよ?どっちかって言うと歴代魔王みたいに筋肉隆々って言うタイプでは無いし、今台魔王のおいちゃん、攻撃はほぼ魔王固定スキルと魔法が主だからさ。


 細身だしぃ……。




 そうそう。

 話はちと違うけれど、あの獣人と人間至上主義の戦争後。

 何故かというか必然というか、獣人と人族による婚姻が激増したのだよ。


 ああ、何故かは無いか。


 何せおいちゃん、無駄に千里眼って言うスキルで幾つか戦場で純潔を散らしている人族やらナニやら見たくもないのに見ちゃったからね?


 しかも耳も無駄に『地獄耳』とか言うスキルのせいで、遥か彼方の遠くから「酷い!初めてだったのに!」「責任を取る!」とか言う声が彼方此方響いて……うん。


 一部だけ阿鼻叫喚だったけど、最終的に戦争が終わったら番関係結んでしまって。


 あれって人族側は丸め込まれてしまったのかな。


 終わり良ければってことなのかもなぁ。


 お陰で混血がドンドン産まれちゃって、幸せそうで何より。






「と言うか魔王って自分のこと「おいちゃん」って呼ぶのか。…やっべ、クソかわぃぃな…。」



 急に勇者が悶始めたけれど、大丈夫なのか?


 と言うかこの勇者、王座の間に現れたと思ったら一気に他メンバー…一瞬のことだったから詳細っていうか詳しく誰が居たのかは判断できないのだけど、何名か居たなぁ~なんて思い返してみる。


 あ、呑気だなって思っただろう?


 だってさ、この勇者。


「あ」と思った瞬間場面が変わって、青い空が見えた。




 瞬間移動ってヤツかぁ。


 そしておいちゃんと勇者が寝転んで居る場所の周囲には草。


 背丈が30センチ未満の青々しい草が一面広がっている。


 これって獣人の猫族が胃腸の調子が悪い時や毛玉を出す時に食している、えーと確か「猫草」とか「犬草」言われているエン麦畑のど真ん中っぽい。




 うわ~…すまん猫族達よ。ああ、犬族もだなぁ。


 折角丹精込めて育てていたって言うのに、おいちゃんと勇者が草達を下敷きにしてしまったよ。実際は丹精込めてなんてしていなくて、種撒いて上にサラサラ~っと土を軽く掛けてから水をかけて放置って言う具合で勝手に育つ簡単植物だったりするのだけれど。


 ついでにおいちゃん魔族は魔族でも猫族と魔族のハイブリットだから、猫耳猫尻尾の愛らしい姿らしいけど。ついでに顔も母ちゃん似だから、側近達に何百回も「無駄に愛らしい」「頭撫でたい」「愛でたい…!」って言われてウンザリしているけど。



 ―――年齢は500歳超えているからどう考えてもオッサンだけど、魔族の皆や同じハイブリットからは「愛らしい」「可愛い」「堪らん」「ょぅじょ」って…。


 最後の「ょぅじょ」は意味わからんけどな。


 そりゃ~身長が150センチしかないちびだけどさ。




 …


 ……。




 はい、嘘言いました。


 本当は149センチしかありません。


 泣いて良いですか?


 と言うか、ね!「魔王」に就任したら何故か若返ってしまって。12~14歳位な見た目になってしまったよぉ。


 就任した時は既に300歳超えていたっていうのに。




 誰だ、あまり変わらないって言う奴は。


 そりゃあ300歳も500歳も魔族には姿形の変化はないけどさぁ。


 威厳ってもんがね?一応【魔王】って肩書があるのだから、ね?




 え、違うって?


 身長?そりゃ~300歳位の時は160センチ位あったよ?




 ……低いって言うな。


 猫族の母さんが小さかったからだよ!


 遺伝だよ!


 魔族の父さんは180センチ超えていたからね!



 だけど、猫族の母さん150センチしか無かったからさ……………。



 ……1センチ高いとか、く、悔しくなんか無いからな!



「へぇ、だからこんなに可愛いのか。」



 うひょぉい!思わず変な声でちまったじゃないか勇者ぁ!


 イイコイイコって頭グリグリしないっ!


 おいちゃん、折角威厳を保つために毎朝必死で髪型整えているのだから。ちょっとでも身長を大きく見せたいって言うかさ、む、虚しい努力だって言うのはわかっているけどよぉ。


 無駄だろうが努力はする!


 努力大事!


 おいちゃん、無駄って言われても必死だからな!


 って、何処触っているんだぁーーーー勇者ぁあっ!



「ん、魔王ちゃんのケツ。」



 ケツじゃねえええええええぇー!


 って、おいちゃんのケツ、服の上から揉むな、脱がすな、首筋舐めるな、乳首こねるな、ケツノアナに舌入れるな、舐め回すな、穴の中に指ぶっ刺すな、あ、け、ケツに勇者のナニを刺すな、や、やぁ…!



「い、にゃぁあああああーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」












「ご馳走様。」って何だよ!なんだよバカぁああああ!


 青姦って何だよ、おいちゃんこの歳まで純潔だったのに!初めてだったのに!アホぉおおおおおおおお!




 いや前も後ろも初めてだったけど、使う予定も無かったけれど。


 そこ、ニヤニヤ嬉しそうにしない!



「マジで!?魔王ちゃんのお初貰っちゃった!これは責任持たねぇーとなぁ!」



 って、キスするなぁ!


 何時ぞやの獣人達みたいに言うなぁ!


 おいちゃんのちんこ触るな、擦るな、い、やぁ…やめっ!


 アナルに突っ込んだままで揺するな、突くな、ちんこを更に大きくするなぁー!



「やっべ、ひんひん泣いて、すがって腰振って、えっろ可愛い…!」



「いやぁぁ…あ、あ、あっ」



「いやぁって、今抜いたら辛いだろ?こんなに自分で腰振って、精液垂らして気持ち良さそうに蕩けていてさ。つーか青姦だからさ、魔王ちゃん興奮して余計溶けているわけ?」



「ちが…」



 変態じゃあるまいしそんな訳あるかー!って魔王のおいちゃん叫びたかったけれど、無理!


 だから勇者ぁあ!勇者のちんこ、おいちゃんの中から抜いてくれえぇ!



「違わないだろ?こんなにキュウキュウ締め付けて、これ以上煽ってどうしたい訳?魔王ちゃん。」



「「魔王ちゃん」ちが…ぅ」



「いやいや、こんなエロ可愛いの「魔王ちゃん」って言うべきだろう?それに俺、魔王ちゃんの名前知らないし。」



「ん、あー…あ、ぁん、ん、なま…え」



「そそ。魔王ちゃんのお名前、何ていうの?」



「や…あ、いやぁ、そこヤダぁ」



「んー魔王ちゃん「ヤダ」って名前?」



「ちが、あ、揺すらないでぇ」



「じゃあ何?」



「ない。」



「ん?」



「代々の魔王は就任した途端に名前、ぁあんっ強く突かないでぇ」



「魔王ちゃん、ハフハフ息をしていて可愛い!で?」



「魔王になる前の名前を捨てる、のぉ…。」



「え、じゃあ誰も皆「魔王ちゃん」って呼ぶの?」



「「魔王ちゃん」ちが、魔王…あ、やぁんっ」



「ええ、こんなに蕩けて可愛いのに名前で呼ばないなんて勿体無い。」



「可愛く、なんて、な…ぁぁんっ」



「滅茶苦茶可愛いよ、だって俺一目で惚れたもの。そんな人なんて今まで見たことがない。」



 それは勇者の目が腐っていて変態だからって言いたいけれど。


 どうにも先程から抵抗と言う気が起きなくて困っている。


 こんなに全身隙間ない程にキスされて、舐められて、デロデロに溶かされて、羞恥をひたすら煽られているのに。


 おまけに初対面なのに何故なのか。




 おいちゃん、年齢500歳行っちゃったからボケが始まったのかな。嗚呼でも歴代の魔王の平均年齢はまだまだ若い方だけど、もしかして猫族の血が関係して平均年齢よりも寿命が短いのかも。だからこうして一気に老化が来た、とか?


 それでも手足は動かせるし、なのに抵抗する気が全く起きない。




「人、じゃ、なぃ。」




 魔王だし。


 魔族だし。


 獣人の血が混ざっているから半魔族だし。


 猫耳だって猫尻尾だってあるし。


 おまけに髪の毛が黒いせいか、猫耳も猫尻尾も真っ黒だけど。


 それでも無駄に魔力が高いからって言うわけで魔族の国民皆から支持されているし。




 …何故か国民達。おいちゃんを見る目が『潤んで和んでいる』気がしないでもないけども。おいちゃんのことを『うっとり見ている』気がしないでもないけども。




 おかしい。


 おいちゃん、魅了魔法持ちじゃないのになぁ。




「そうかそうか、それじゃもっと喰わせて貰っても良いってことだよな。」




「いっ、や、ぁああああーーっ!」




 急にグイっておいちゃんの腰を掴んで、勇者は草の上に座り込んだ上においちゃんを串刺しにした。ナニを串刺しっていうのは…おいちゃんちょっと前まで500年も純潔だったのだから、聞かないで欲しい!




「ぉお、体位変えて座った俺の上に魔王ちゃんの穴に俺のチンポぶっ刺したら魔王ちゃんのチンポから白いのがビュビュって。魔王ちゃん気持ちよかった?」




 聞くな!バカ勇者ああああああああああああああああああああああ!!!






「喰わせろ」って言っただろって、サイってぇだなこの変態勇者あああああッ!




「一目惚れだからな。」って、バカ勇者!


「大事にするから。」って、お前一体何のために魔国に来たんだっ!つーのぉおおおお!魔王であるおいちゃんを退治しに来たのだろうが!


 と言うか、と言うかー!お前仲間が居ただろうが!


 更にはどう見ても人間至上主義国から派遣された勇者だろうがぁあ!



「ん?違う、違う。」



 何が違うって言うのだ!






「ん?おい、魔王。取りあえず喰わせろ(物理的に)って言うため。」



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