31
もう婚儀の寸前になっているけれどロカの姿が見えない。ヨウカや兵達に焦りの色が見える。
「約束したから、きっと大丈夫」
不安になる気持ちを奮い立たせる。もしもの時を考えたほうが良いのかもしれないけれど、ロカの言葉を信じるんだ。
目立たないように外の様子を観察する。ここから見えるのは広場で、来賓客ではない群衆が賑やかだ。その見た目は様々で、遠い所から来てくれている者もいるとか。見慣れない服装やツノが生えたような姿もある。
ここからロカと2人並んで、私のお披露目があると言われているのだけど思っていた以上に集まってくれている。
出店もあるようでお祭りのような雰囲気があり、主役じゃなければあの中で楽しんでみたいと思っちゃう。
「……ん?」
群れを逆らうように進む者を見つける。
マントを被っているのだが足が悪いのか引き摺るように歩いて、そのぎこちなさに心配になっていると誰かとぶつかったようで地面に倒れた。
声までは聞こえないけれどぶつかった相手に怒鳴っているようだった。
怪我はないだろうか、近くに兵はいないようだけど向かってもらったほうが良いのでは……。
目を離さないで様子を見ていると、立ち上がる際にマントがはだけた。隠れていた顔が露わになり、私は言葉を失った。
「……っ!」
ここから距離があっても分かる。あの鋭い眼光はカドに間違いない。
こんなところにいたらロカ達も見つけられないだろう。
「ヨウカ!あそこ!」
「え?……あっ!」
近くにいた兵に声を掛け、向かってもらうが、ここからでは間に合わないだろう。せめて見失わないようにしなくては。
「大丈夫でしょうか」とヨウカがぽつり。
「この機に逃亡するわけでもなく、ここに現れるなんて嫌な予感がします」
「……うん」
今のカドは何を仕出かすか分からない。周りを巻き込んでしまう可能性もある。直ぐに隠されたけれど憎悪に満ちた顔をしていたから。
のろのろとした動きだけれど、此方へと近付いてきているようだ。狙いは私と王……?
群衆に遮られ、兵達は上手く進めていないようだ。
「ロカ様たちはまだ戻らないのでしょうか。このままでは婚儀をぐちゃぐちゃにされてしまいます!」
「……そんなこと、させたくない」
何か手はないだろうか。
大事にせずにカドを捕まえる方法……。
冥界の花嫁は過剰な愛に堕とされる。 音央とお @if0202
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