第3話 パリオリンピック閉会式

「どーも、カタリィ・ノヴェルです! ぼくのことは気軽にカタリと読んで――いや、呼んでくださいね!」


「どーも、リンドバーグです! わたしのことは可愛らしくバーグちゃんと呼んでね!」


「せーの、二人あわせて『カクヨム』です!」

「せーの、二人あわせて『カクヨム』です!」


「バーグちゃん、17日間の熱戦が終わって、パリオリンピックが閉会したね!」


「そうだね、カタリくん! いろんな話題があったオリンピックだったけど、総じて、わたしはすごく楽しめたよ!」


「それじゃ、今回の漫才ではオリンピックのラストを飾った閉会式について、順番に振り返っていこうか!」


「うん、そうしよう!」


「まずはレオン・マルシャンさんが聖火の火が灯されたランタンを手にして、歩き出すところから始まったんだけど、いつ白いマスクを被るか期待して待っていたのに、全然マスクを被らないから、ガッカリしちゃったよ!」


「レオン・マルシャンさんは今回の大会で4つの金メダルを獲得した競泳の選手だから! 開会式で登場したマスクマンなわけないでしょ!」


「一方、スタジアムでは選手入場が始まったんだけど、日本の旗手は女子やり投げの北口榛花さんとブレイキンの半井重幸が務めたんだよね! あっ、間違えちゃった。シゲキックスさんとハルカックスさんだったね!」


「北口榛花さんには『ックス』をつける必要ないから!」


「面白かったのが、日本選手は扇子を持って、ジュリアナダンスをしながら入場してきたところだよね!」


「たしかに日本の選手たちは扇子を持っていたけど、ジュリアナダンスなんかしてないから! 扇子イコール、ジュリアナダンスって、いったい何年前の認識なの!」


「選手入場が終わって、マラソンのメダル授与も終わると、ステージ上に勝利の女神ニケの彫刻が現れたんだけど、なぜか肝心の頭部が無くてがっかりしたよ! 閉会式までに製作が間に合わなかったのかな? それとも開会式のマリー・アントワネットを意識して、頭部がなかったのかな?」


「あのニケの像は、はじめからそういう形なの! はじめから頭部がないの!」


「次になぜか突然、ヒーローショーが始まったからびっくりしたよね! 開会式でも子供たち向けに『ミニオン』を登場させたから、閉会式でもヒーローショーをしたのかな?」


「えっ、カタリくん、閉会式でヒーローショーなんてあった? わたしは見た覚えがないんだけど」


「だって開会式で聖火を運んだマスクマンに、銀色のアンドロイドみたいな登場人物、それに趣味の悪い金ピカの悪役まで出てきたんだから、あれは完全にヒーローショーでしょ?」


「見方によってはそう見えるけど、あの金ピカの登場人物は悪役なんかじゃないから! あれは『ゴールデンボイジャー』というキャラクターなの!」


「そのあとにステージ上に全身白タイツの集団が現れたんだけど、あれも金ピカの悪役の手下の集団にしか見えなかったよね!」


「カタリくんがそう言うと、本当にそういう風にしか見えなくなっちゃうでしょ!」


「さらになぜかピアノが縦に吊らされて演奏するシーンがあったけど、あれもきっと金ピカの悪役の仕業だよね! だって本来ならば、ピアノは平行に置かれるはずだから!」


「ピアノはそういう演出だったの! 何度も言うけど、あの金ピカの登場人物は謎の悪の組織のリーダーなんかじゃないからね!」


「でも笑っちゃったのが、最後にあの金メッキがボロボロと剥がれ落ちちゃったところだよね! やっぱり悪の登場人物はそれ相応の報いを受けるんだね!」


「金メッキが剥がれ落ちたのは、選手が受け取った金メダルのことでしょうが! わずが数日でメダルのメッキがはがれたって、批判されているの!」


「ヒーローショーの後に始まったのが、大会を振り返る映像シーンだったよね! ここでは審判が誤審するシーンばかり流されて、貴賓席にいたマクロン仏大統領もさすがに苦笑いするしかなかったよね!」


「閉会式でそんな嫌がらせの映像を流すわけないでしょ!」


「映像シーンの後に、ミュージシャンによるライブがあって、それが終わると、バッハ会長のスピーチに移ったんだよね! でも今回、バッハ会長は珍しくジョークを言ったんだよね!」


「そうだね。気持ちが高揚していたのか?」


「バッハ会長は『わたしの父のバッハは曲作りが得意でしたが、残念ながら、わたしは音楽の才能に恵まれませんでした。そのかわり、オリンピックの裏金作りの才能が開花しました』ってスピーチをしたんだよね! 会場中、大ウケだったよね!」


「いくらバッハ会長が来年に退任するからって、このタイミングで言うジョークじゃないでしょ! バッハ会長はセーヌ川のギャグを言ったの!」


「そうだったね。バッハ会長は『選手から不評だったセーヌ川の水を、わたしも飲んでみましたが、お腹を壊すことはありませんでした。これもきっとパリオリンピック組織委員会の努力の賜物でしょう。もっとも、わたしは水を飲む前に、胃薬をしっかり飲んでいましたけどね』って、小粋なアメリカンジョークを披露したんだよね!」


「くだらなすぎるジョークでしょうが! バッハ会長は『今回はセンセーショナルなオリンピック、あえていえば《セーヌ》セーショナルなオリンピックでした』って言って、ダダ滑りしたの!」


「そういえば、バッハ会長のスピーチは長いことで有名だけど、今回も約8分間もあったんだよね! だから会場では飽きる人が続出して、北口榛花さんなんか、バッハ会長のスピーチを聞きながらカステラを頬張っていたよね!」


「北口榛花さんがカステラを食べていたのは、やり投げの競技中のことでしょ!」


「バッハ会長のつまらないスピーチの後に始まったのが、次のオリンピックである

2028年ロサンゼルスオリンピックの組織委員会によるショーだったね! まず最初に、いきなりトム・クルーズがスタジアムの屋根から登場したのには驚いたよね!」


「さすがアメリカということで、エンタメ色の強い演出でのスタートだったね」


「トム・クルーズは超一流のスパイだから、誰にも気付かれること無く、会場からオリンピック旗を奪ったんだよね!」


「いや、バレバレだったでしょうが! むしろ、トム・クルーズの存在に気付かなかった人はいないくらいだったから! ていうか、スパイなのは、映画の中での役柄だからね!」


「実はトム・クルーズは本当はエッフェル塔から登場する予定だっだんだけど、60メートルくらいよじ登ったところで、警察に拘束されて、エッフェル塔からの登場を諦めたんだよね!」


「エッフェル塔によじ登って、警察に拘束されたのは別の人だから! トム・クルーズが捕まるわけないでしょ!」


「オリンピック旗を奪ったトム・クルーズはバイクに乗ると、追ってくる黒スーツ姿のレオン・マルシャンから逃走し始めたんだよね!」


「それじゃ、テレビの『逃走中』になっちゃうでしょうが! たしかにレオン・マルシャンさんは黒スーツ姿だったけど!」


「その後、オリンピック旗は無事にロサンゼルスに到着して、トム・クルーズからスポーツ選手へバトンリレーされていったよね! さらに途中のスタジアムでは、四つの金メダルを持っている陸上のマイケル・ジョンソンさんも映ったんだけど、画面の端に、なぜか他の陸上選手がちょろっと映りこんでいたよね!」


「そんな選手、映っていたかな?」


「映っていたよ! ベン・ジョンソン選手が『ドーピング、ダメ、ゼッタイ』っていうプラカードを持って、映りこんでいたよ!」


「その一件はもう忘れてあげようよ!」


「最終的にオリンピック旗は砂浜のステージに到着して、そこから今度はライブショーが始まったんだよね! まず最初に登場したのが『レッドホットチキン』」


「それ、ケンタッキーで売ってるチキンだから! ステージに登場したのはロックバンドのレッドホットチリペッパーズ!」


「次に登場したのが『アイリッシュコーヒー』」


「ビリー・アイリッシュだから! そんなものを飲んでる場合じゃないでしょ!」


「そして、最後にカリフォルニア州出身のラッパー『ホットドッグ』が登場したんだよね!」


「スヌープ・ドッグだから! カタリくん、全部、間違えているから! しかも全部、食べ物!」


「ロサンゼルスでのショーが終わると、またフランスに戻って、ランタンを持ったレオン・マルシャン選手がスタジアムに登場したんだよね! ステージ上には他の選手も集まって、みんなでハッピーバースデイを歌いながら、ランタンの火を吹き消すことになったんだよね!」


「なんで、そんな歌を歌うの! 誕生日ケーキのロウソクを吹き消すわけじゃないんだからね!」


「実は、ここで少し揉めたんだよね!」


「えっ、そうだったの?」


「誰がランタンの火を吹き消すかで揉めて、それで結局、吹き消す人をルーレットで決めたんだよね!」


「柔道の会場にあったルーレットの話はタブー扱いだから!」


「とにかく、これでパリオリンピックも終わったわけだけど、最後に少し個人的なことを話してもいいかな?」


「どうしたの、カタリくん? なにか話したいことでもあるの?」


「うん、今回のオリンピックを通して、ぼくは選手の皆さんの活躍に本当に感動したんだよ! だからSNSに『選手の皆さんは頑張ったので、ゆっくり休養してください。皆、優勝でーす!』って書き込みをしたんだ。そうしたら、なんとバッハ会長から直接返信をもらったんだ!」


「カタリくん、本当なの? スゴイじゃん! それでバッハ会長からの返信にはなんて書いてあったの?」


「えーとね、こう書いてあったよ! 『おまえはテレビの前で観戦していただけだから偉くないので、死んでくださーい!』ってね!」


「それ、完全に別の人だから! ていうか、それを言った人は、今、大変なことになっているからね!」


「でもバッハ会長から直接返信をもらって、すごく興奮して、浮かれてしまったというか、なんだか気持ちが『フワフワ』した感じなんだよね!」


「カタリくん、その単語を言いたかっただけでしょ!」


「さあ、オチもついたので、このへんで今回の漫才は終わりにしたいと思います。どーも、ありがとうございました!」


「どーも、ありがとうございました!」

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オリンピック期間限定で復活! 時事ネタぶった斬りカクヨム漫才! 鷹司 @takasandesu

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