アイスクリーム殺害事件

粟野蒼天

アイスクリーム殺害事件

アイスクリームが殺された。バニラ味とチョコミント味のアイスクリームだ。


2年6組の教室で溶けてべちゃべちゃになっているアイスクリームが発見されたらしい。殺害方法はドライヤーにあてられたことによるものだったそうだ。事件現場のため学校はしばらく封鎖されることになった。


学校や周辺地域ではこの話題で持ちきりだ。


………


意味が分からない。なんなんだよアイスクリームが殺されたって!

意味不明すぎる。俺がおかしいのか?


奇妙すぎる。俺以外の人間がこの状況を平然として受け入れてる。


現実は小説より奇なりとはこのことだ。


誰か俺と同じ状況に陥っている人はいないのか?


「いや~奇妙だよね~アイスクリームが人と同じ扱いを受けてるなんてね~」


誰………?図書館の部屋でうつむいていた俺は顔を上げた。その人は俺の心を覗いているかのように語りかけてきた。


顔を上げると俺の顔を覗き込むかのように見つめてくる黒髪少女がいた。


俺がかを上げると少女はあ、気づいた!と呟き顔を上げた。


「さてさて少年ここで問題です!なぜ二味のアイスクリーム君たちは殺されてしまったのでしょうか?」


いろいろツッコミたいところだがここは素直に答えてみるか。


「誰かから恨みを買ってたとかですかね?」


「う~んなんともありふれた回答。つまらない!さてはモテないね君」


「八倒すぞ!」


しまったつい口に出してしまった!


「こらこら~女の子にそんな言葉を使うんじゃないよ」


「いきなり話しかけてたやつの変な問題に答えたディスられる。そんなの誰だってキレるでしょうが!それにあんた誰だよ?」


「では君にもうひとつ問題。私は誰でしょうか?」


「頭のおかしいやつ」


光の速度で事実を突きつけてやった。


「ぶぶー残念!!正解はあのアイスクリームたちを殺した謎の美少女でした」


「はいはいそうですか………今なんつった!?」


「え?「謎の美少女でした」って言ったんだよ」


「いやその前のセリフだ」


「あぁ………わたしがあのアイスクリームたちを殺したってこと?」


「そうそれ!」


余りにも自然な会話の流れでつい耳を疑った。


「それは本当なのか?」


「本当だよ。嘘ついて私になんの得があるのさ?」


それもそうか。


「じゃなんでアイスクリームたちを殺したんだ?」


「理由なんて必要あるの?ただ殺したかったから殺した。それだけだよ」


納得できない自分がいる。何もかもがおかしい。

一番納得できないのは、彼女がアイスクリームを殺したことに対する嫌悪感だ。

いつのまにかそれが悪いことだよ認識してしまっていた。


「そもそもなんでアイスクリームが人間として認識されているんだ?」


「なんでだろうね」


少女に声色が少し変わった。


「人ってさ見たくないものからは目を背くことはできるけどそれも永遠じゃないんだよね」


「いやいきなりどうしたよ?」


「いや~ちょっとポエマーっぽくいってみたかっただけ」


少女はハアとため息を付いた。 


「訳分かんね」


見たくないものか………

それとアイスクリームたちはどう繋がるのか?分からない。


少女を見る。


あっ………


なんで今の今まで気が付かなかったんだろ。いや気づこうとしなかったの間違いだな。


少女の身体は傷だらけだった。


「気づくのが遅いよ」


俺の視線に気が付いたのか少女がケラケラと笑った。


「それ………」


「ご察しの通り。あのアイスクリームにやられたんだ」


「………」


「みんな私がいじめられてるのを見て見ぬふりだった。でも君は違った」


「俺お前に何かしたか?」


「君は私がいじめられてるところを見て唯一助けてくれたんだよ。覚えてないだろうけど」


「すまない、まったく記憶にない」


「当然だよ。あの時と今と全然恰好が違うからね。ほらモサモサしたやつがいたでしょう」


あっ………!確かに半年前にそんなことがあったような。


「ごめん………」


「いや~ほんと鈍感だよね」


少女がアイスクリームたちを殺した理由は分かった。しかしなぜ、なぜアイスクリームなんだ?なぜ俺はアイスクリームが殺されたと認識したんだ?


それはあとでいいか。


なぜだろう、無性にアイスが食べたくなってきた。


「なあアイス食いに行かねか?」


「お、いいね~私はチョコミントで」


「じゃあ俺はバニラで」


























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