はじめにするべきこと

 雨が降りすぎなのでは? そう思った私のところに、祖母からの電話がかかってきました。


「ラジオを聞いていたら避難指示が出た。タコちゃん(私)も近所の人が逃げようって来たら、一緒に逃げるのよ。絶対よ」


 おおよそそんなことを言っていたと思います。電話を切った後不安になった私が二階の窓から外を見ると、家の庭が冠水していました。こんな山までくるわけないだろうと思っていた冠水が、目の前にあったたのです。

 急いで両親に連絡をしました。そして友人全員の安否確認、その日の自動車学校の取り消しなど、できる限りの連絡を取りました。自動車学校の人を冠水した道路まで迎えに来させるわけにはいきません。


 先述した通り、私の実家は山の上にあります。川は遠いものの、土砂は流れ込むだろうとは思っていたのですが、実際に起こるとは思っていませんでした。

 考えてみれば当たり前です。災害は「今から行くよ」だなんて言ってくれません。これが職場や学校だった場合、先生や上司の指示に従いながら避難、または自分の判断で各自避難すればよいのですが、私は車も持たない上に周囲が冠水した家にいます。絶体絶命、どうしましょう。


 私の住む地区のすぐ下までは、避難指示が出ていたようです。ですが避難場所は遠く離れた小学校。私が行けば歩いている内に流されてしまうことは明白です。家にいる時、私は考えました。


「ああ、死ぬんだ。このまま家に水が来たら、私は死んでしまうんだ」


 パニックになった頭ではそんなことしか考えられませんでした。信じられないかもしれませんが、実際そうなるのです。山だから水没だなんてほぼありえないのに。たくさんの水が側溝に流れていっていたのに。持病のせいもあるかもしれませんが、冷静さを失っていました。

 そして、こうも思いました。


「皆に連絡してよかった」


 下の方の地区には、私の友達も住んでいます。どうかその子たちが無事に乗り越えられますように。ずっとそう祈っていました。これから隣町に行かなければならない子も、仕事で離れられない子もいます。



 まずは命てんでんこです。避難指示はしっかり守りましょう。

 そして安否確認は、自分が安心するための役割のみならず、相手を安心させる効果もあります。今あの人は大丈夫だな、あっちはこういう状況なんだな。知るだけでもだいぶ違うのです。それはきっと、相手も同じです。



【その一 皆の無事を確認し、命を守る行動を】

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