scene7 その声ダダモレでした……(〃'▽'〃)



――この学校の誰もが憧れる才媛、高嶺の花、可憐な一輪。ツララ姫こと高遠氷麗、公園のベンチで思ってもみなかった。



(風が吹き抜ける)


「普通、逆じゃないかって?」

『ダメなの?』

「固くて、寝心地が悪い? 心配しないで、キミはそんなに筋肉ないから」

『それが良いの。キミが良いの。これも彼氏君の務めだよ』


(高遠氷麗の、表の微笑、心の声の微笑が重なる)

(心地良い沈黙)

(風がまた、頬を撫でる)

(コクリ、コクリ。首が傾く)

(そして心地良い、スピースピーという寝息がキミから漏れた)



「……普通逆じゃない? どうして膝枕する方が寝ちゃうかな?」

『帰宅部が、無理に全力疾走するからダゾ』


「体力なさすぎ」

『でも、そんなに必死になっちゃって』


「私が、誰彼構わず尻尾を振るような女だと思ったの?」

『心外~。そんなに私、軽くないゾ』


(つんつん、高遠氷麗はキミの腹を指でつくが、起きない)


「お腹弱いくせに……熟睡だね」


(つんつん)


『男の子の弱いとこ、刺激してもダメか』


(つんつん)


「……誰かと距離を近づける日がくるなんてね」


(高遠氷麗は嘆息をもらす)


、イヤでイヤで仕方なかったのになぁ」

『キミが、いつも私に向けて〝スキスキ〟言うからだよ。毎回、調子狂うし。どんな顔して良いか分からないし――』


「仕返しのつもりだったのに」

『波長があったのかな。チューニングあわせるように、キミに意識を傾けたら、ね。自然と私の声をキミに送信できちゃったんだよね』


「普通は、気味悪がるでしょ?」

『態度、全然変わらなかったよね。むしろ、好きがさらに溢れてさ。どうして良いか分からなくなちゃったよ』


「……大抵、心の声は誰しも悪意が同居しているのにね。だから、誰も寄せつけたくなかったのに。初めてだよ、好意100%の人は」

『癒されちゃったなぁ』


「キミといる時間を独占したいって思っちゃったの」

『誰にも渡したくないって』


「そう思ったら、自分だけ気持ちが昂ぶるのが悔しくて」

『キミからも好きって言ってもらいたかったの』


「だからわざと心の声を閉ざした」

『そうしたら、キミ泣きそうな顔するでしょ』


「でも、追いかけてくれて嬉しかったよ」

『心の声だけじゃなくて、言葉にしてもらえるのって、こんなに嬉しかったんだね』



「え? それ……寝言?」

『起きて……ないね。そういうトコだぞ、キミは』



(すーすーー、寝息が響く)

(かたん。高遠氷麗は立ち上がった)

(すーすー。キミの寝息)

(ちゅっ、とリップ音が響く)





「こんなに好きにさせたんだから、責任とってよ?」

「好きだよ」


「好き」

「どうしよう、止まらないよ」


「スキ」

「本当に好き」

「大好き」


「目が覚めたら、あれは夢でしたなんて言わないでよ?」

『そんなこと言ったら、ぶん殴るからね』

「大好き」







「『……大好きだよ』」


(表の声と心の声が、息ぴったり溶け合うように。そして昂ぶった感情に身を任せて、言葉を紡いで――もう一度、リップ音が響いた)



Fin.






________________






作者からのお礼という名の蛇足。

初めてASMRに挑戦しました。

果たしてこれがASMRと言って良いのかと自問自答する日々。自分的には苦笑いですが。

ASMRなのに、やたら動きがあるしねぇ(笑)


スマートに書かれる作者様達、すげぇなぁって本当に尊敬した尾岡でした。


実はこの作品、あらすじにも書いている通りなのですが

ボイスドラマ部門にエントリーの


「親友♂がある日女の子になってしまったようなんです。そこからはじまるSWEET DAY'S……え? ちょっと、スイートすぎません? 俺♂、親友とどう向き合ったら良いのでしょうか?」

https://kakuyomu.jp/works/16818093080920311731


同じ学校が舞台です。

この作品の登場人物がこっそり出ていたりします。


ちなみにこのASMRで書いたCafe Hasegawaや恋する髪切り屋さんは拙作、


「君がいるから呼吸ができる」

https://kakuyomu.jp/works/16816452219719674555


こちらに出てきます。

共通の世界観で書くの好きなんですよね。


お前、ソコにいたのかよ、って思ってもらえたら

とても嬉しい(笑)


そして……。


いつか、高遠さんとキミ(つまり読んでくださったアナタ)とのラブコメを違う形で書いてみたいなぁって思いますけど。まぁ、まずは一区切り。


最後まで書けたのは、

読んで、応援してくださった皆様のおかげです。

そして新たに読んでくださった皆様

こえけんに一緒に参加した作者の皆様も。


皆さんがいたからこその物語だと思っています。

本当にありがとうございました!


※追伸。蛇足を省いても一万字は字は越えていますので、ソコはご安心ください!



令和6年8月7日 作者 拝(〃'▽'〃)





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【ASMR】ツララ姫さん、その声ダダモレです(〃'▽'〃) 尾岡れき@猫部 @okazakireo

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