scene6 告白されても、その声ダダモレです(〃ノωノ)
(カリカリ)
(シャープペンシルを走らせる音が心地良い)
「どうしたの? なんでもない? そう……なら、良いわ。集中しなさい、良い線いっているけれど、まだまだ詰めが甘いわよ。スペルミスが目立ってる」
(発する声がやけに響く)
――高遠氷麗と一緒に過ごすのが日課になっていた。今日も図書室で、テストに備える。でもキミは今いち、勉強に身が入らない。あの髪を切った日から、声が聞こえなくなった。それが気になって仕方ない。
「ねぇ?」
「やっぱり髪を切ったら注目されるようになったわね。別に私と無理に一緒にいなくても良いのよ。他の子にも誘われているの、知っているのよ?」
(パラパラパラパラ)
(風が教科書をめくる)
――キミは首を傾げた。他の子の声より、高遠氷麗の声が聞きたい。
「まぁ、良いわ」
「私、約束あるから。ここで待っていて。すぐ終わらせて帰ってくるから」
(立ち上がる音)
(足音、そしてドアがしまる)
(コクリ、君は唾を飲み込んだ)
――お昼休みに、男子生徒が高遠氷麗めがけてやってきた。キミとお弁当を食べていたにもかかわらず。
(立ち上がる音)
(歩く音)
(そして、それが駆ける音へ)
(たったったった――)
――高遠氷麗を止められなかったことを後悔しながら、キミは全速力で駆けた。
■■■
「約束の木の下で……とはよく言ったものね。こんなの、ただの木じゃない」
『また、このパターンだよね。この後の展開はイヤでも想像できちゃうけど』
「……それで、話って?」
『告白かぁ。こうも、自分が想っていない人から、好きって言われても、全然嬉しくないけどね』
(その言葉に、キミは息を飲む音。そして、カサリと葉を踏みしめる音が響いた)
「……なんだ……猫がいたみたいね」
『気になって来てくれたの? それなら、ちゃんと迎えに来てくれたら良いのに。どうして隠れるの?』
「あなたの気持ちは、受け取りました(寂しそうに微笑む)」
『もう、良いかなぁ。結構、頑張ったつもりだったんだけれど。キミにとっては、私もクラスメートのうちの一人だったんだよね』
「平たく言えば、貴方は私と男女の交際をしたいってことよね?」
『付き合ってから、好きになるってこともあるよね。お付き合いって、そういうことでしょ?』
(とくんとくん、キミの心臓の音が鳴る、どうやっても鳴り止まない)
(かさっかさっ。葉が揺れた)
「でも、ごめんなさ――」
――高遠氷麗の言葉を最後まで聞かず、キミは飛び出した。気付けば高遠氷麗の手を握り、走り出していた。
『ちょっと待って! う、嬉しいけど……期待していたけど……ま、待ってぇ! 帰宅部が全力疾走とか無理……ゆ、指! それ、恋人繋ぎ! う、嬉しいけど! 廊下、走っちゃらめぇ! し、心臓がもたにゃ……』
「ふふっ(嬉しそうに笑う)」
(たたっ、たたっと足音が響く)
「え?」
「今、ここでそれ言う?」
『嬉しいにきまってるじゃん! 待たせすぎだよ、ばーかばーか!』
「(やや息切れしながら)ムードもクソもないじゃない。本当に、キミは……」
『でも、嬉しかった!』
「『There’s only one thing I want to change about you and that’s your last name.」』
「『あなたについて一つだけ変えたいものがあります。あなたの苗字です』」
「『……そんなこと、言っちゃうんだね?』」
「『私ね、キミが想う以上に欲深いだよ?」』
「『絶対に、離さないから』」
「『ねぇ?』」
「『大好きだよ』」
「『心のなかで、もうガマンなんて、しないから』」
「『ちゃんと受け止めてね』」
「『大好き』」
(学校の中をキミと高遠氷麗は、無邪気に駆け回った)
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