アンバーは宛先のない手紙を引き受け、それを受け取るべき誰かへと届ける魔法使い兼手紙屋だ。彼女は少女型人型自律機械ジィナを供連れ、荒廃した世界に点在する町から町へと渡りゆく。書いた者の思いが詰め込まれた手紙を携え、誰とも知れない受取人を捜して……。
“手紙の魔女”と呼ばれるアンバーさんが町を移動するには宛のない手紙が必要となります。それが彼女の手に渡されたときから掘り下げられて展開するドラマ、まさにドラマチックなのですよ。
宛がないことには意味があります。そして手紙には書き手の思いが込められています。さらに手紙を書くに至る動機があります。書き手には書く前から伝えたいことがあって、その向こうには思いを受け取るべき相手がいて。遠く離れた誰かと誰かの心――断たれていた縁がアンバーさんとジィナさんの旅によって繋がれて結ばれる。その瞬間! この上ない人情劇が一気に形を成すのです。
ゆるさと鋭さのギャップが光る主人公ふたりの姿と掛け合いもよいですよー!
(「なにはなくとも世は情け!」4選/文=高橋剛)