僕の役割

青甘(あおあま)

第1話

 今日も僕は少年の顔を見る。もう少年といえる年ではないかもしれないが

少年はいつものように机に置かれている僕を腕につけるとスマホの時刻と僕に表示されている時刻を見比べる。


誤差がないと分かるといつも通り階段を降り、家族と朝食を食べる。


 僕はこの時間が好きだ。

家族が全員そろって楽しそうに話している光景が。



 少年は食べ終えるとあわただしく支度をはじめすぐに学校へと向かう。今日は期末テストのためその顔は少し緊張している。


大丈夫






 僕はいつも通り正しい時間を少年に教えるという責務がある。これは何年もしていることだ。少年が小学生の頃から一緒にいるためかれこれ7,8年は経つ。だが、僕の時間に狂いはない。期末テストだろうと正しい時間を伝えれるだろう。



 学校につくと席に座り期末テストの準備を始める。準備といっても筆記用具を出すことだ。少年は席に座ったまま僕の方をじっと見ている。緊張しているときにする癖だ。




 大丈夫というように静かに、力強く秒針を動かす。 


 先生が来て、誰もが整理し始める。僕も少年の手から離れてしまう。去年まではつけれていたのにスマートウォッチなどの発達によりカンニングが疑われるため僕は少年と一緒にはテストを受けれなくなったのだ。それが寂しくもあり、どこか嬉しくもある。




 期末試験が終わり少年は帰路につく。その手には僕がついている。


 



 たくさんものが発展していく時代。僕は必要なくなるかもしれない。でもその時までは少年のために時間を伝えていこうと思った。






今日も少年の時計の秒針からはカチ、カチと音が聞こえる。

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