第16話
「おかえり。冥土からお土産でも持ってきたのかな?」
男は振り返り、刀を改めて構えて一挙手一投足も見逃さんと対象を注視する。
「み、みのり?」
クラスメイトの変化に思わず戸惑う姫。
『はぁ〜私の出番多すぎない!?
もう記憶消したり、周りに結界張ったり、この配信?っていうの止めたり、世界の事象を改変するのす〜〜〜〜ごい大変なんだけど??』
立ち上がった女はやれやれと心底面倒だというように言った。
男がつけた傷も血も土の汚れさえも綺麗になっていた。
瀕死で倒れていたマークも気を失ってはいるものの健康的な顔色と正常な息遣いをしていた。
「同一化もせずに降りるとは、化け物めっ」
どこか呆れたような憎いような顔をして吐き捨てるように呟いた。
『あらら、こんな可憐で純情で美しい乙女に化け物なんてひどいわ!内包者くん。おろおろ〜しくしく』
まるで糸のきれたような人形のように倒れ込み泣いたようなフリをする女。
「み、みのり?みのりなんだよね?」
言葉と行動はいつも通りだが、言葉の節々から身に纏う空気からどこか歪なものを感じて問いかける。
すると女は雰囲気を一変して絹のような白い髪を靡かせ、ゆっくりとそして、優雅に立ち上がり姫に向かって微笑んだ。
「「ーーっ!」」
神話の彫刻のような顔立ち。
咲いたばかりの白百合のような肌。
エメラルドのような澄んだ翠眼。
神聖さ高貴さを内包したような、
溢れんばかりの神々しさを身に纏う雰囲気。
立場がら色々な国の、王族、皇族や教皇など身分の高い、やんごとなき方々と会った事がある姫が思わず見惚れてしまった。
まるで遥か雲の上におられる、いと貴きお方に拝謁しているような奇妙な感覚に包まれる。
「ちっ!憑きものふぜいがぁっ!!」
ドス黒いオーラを深く深くして魔力を練り高めて叫ぶ。
思わず見惚れて平伏しかけていた男は使命を思いだし眼前の異常者へ敵意を向ける。
「闇に呑まれろ!
複数に分身した男はあらゆる方向から雷の一刀を放つ。
『ねぇ?誰に向かって殺意を向けてるの?
ゾッとするような低い声だった。
殺意と悪意を織り込んだ必殺の一刀は女の眼前で止まった。
時間が刻むことを拒んだ。
男が姫が時間が、世界が止まった。
否、ただ1人だけ。
行動を許された詠唱者は告げる。
『ねぇ。この魔法はね、全てを返す魔法なの。
貴方が他者に与えた痛みや苦しみを返す魔法なの。
貴方はどれだけ他者に苦痛を与えたんでしょうね?
魂に刻まれたそれを一つ一つ貴方に返済する魔法なの。とってもとっても慈悲深い私の魔法なの。
ゆっくり味わってね』
女はそう言って男に聖母のような笑みを向けた。
そして呟いた。咎人の罪を。
『
膨大な光の奔流が迸り、男はその中に消えていった。
『私を裁けるものは現れるのかしら、もしくはそう…』
最後の呟きと共に世界の時間は動き始めた。
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やる気がないなら帰れ!とダンジョン研修中に言われたので帰ろうとしたら未踏破の階層にきちゃいました。 ユッケじゃ〜ん @yuke7my
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