第15話
「おやおや、これはこれは可愛いお嬢さんだ。
食べたいちゃいくらいに」
白い服を血みどろにした男は紳士然として乱入者に対してお辞儀をする。
「みのり!!!!」
涙でグシャグシャになった顔に一筋の光が射す。
「エミエミちょっと待っててね」
聖母のような微笑みを姫に向けたあと、
眼前の敵を改めて睨みつける。
「あいにく私の貞操は安くはないよ。
それこそ、この星をまるまる買えるくらいじゃないと
「では、億万長者になるとしようか
「そもそも君は私のタイプじゃない。
資格がないから諦めて欲しいな
「それは残念、僕のモノにらならないのなら、せめて美しい記憶のままで終わらせるとするよ。
「貴方の人生の終着地点はここだから。
とっても可愛い私の顔を目に焼きつけて人生の幕を下ろせるんだ。幸せだね、中2くん。
「さっきから何を怒ってるんだい?
これは君の知り合いだったのかな?
男は地面に倒れているマークの背中を踏みつけながら問う。
「よっぽど、人生の最後の1ページを刻みたいようだね。
怒気を孕んだ詠唱と共に身を低くして距離を詰めるみのり。
「人の神経を逆撫でするのが気持ちいいんだよ
それに応えるように男も速度を高め向かっていく。
「
魔力でできた風の剣を右手に顕現させて、地を這うように、速度をのせて左上空へ振り上げる。
「
右上段に構えた刀を右下へ振り下ろす。
剣と刀がぶつかり合う音が響き渡る。
両者の魔力が昂り、辺りには強風が吹き荒れる。
風と雷の魔力が激しくお互いを食い破らんとせめぎ合う。
一瞬の攻防。
一瞬にも満たぬ時間。
しかし、両者には永遠とも感じられる程の鍔迫り合い。
「つつんであげるよ。優しくね」
「ーーっ!!!」
剣は砕け、闇は風を呑み込み、魔力できた鎧は消滅し、刀は勢いのまま対象を斬り下げた。
血の海に沈むみのり。
勝敗は決した。
辺りには男の高笑いが響く。
「僕の闇の深さを舐めないでもらいたいね。
さぁ、任務を果たすとしようか。プリンセス」
一歩、また一歩、
ゆっくりとゆっくりと近づく男。
死の宣告。
真っ白だった服はほとんどが赤く染まっていた。
血の衣を羽織った男は死を運ぶ。
「みのり…マーク…嫌、やめて、こないで」
死神の姿に、赤い処刑人の歩みに、生の終わりに、
腰が抜けへたりつき、嘔吐し、全身の穴という穴から体液を垂れ流し、姫は恐怖に支配されていた。
「エミリー。さぁ君も僕の闇の中へ」
姫が深淵に呑み込まれそうになった瞬間。
『
深い闇の中に眩い光が広がった。
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