第14話
「よっとっと、あらよっと!!あっ!あぁ〜〜〜」
長いツタを握り空中を叫びながら飛ぶのは猿、ではなく美少女だった。
「ふぅ〜ジャングルクイーンみのみのだぜっ」
キラーンという擬音が合いそうな表情を浮かべるみのり。
それとは裏腹に状況は芳しくなかった。
「ふぅ〜すごい!!全然進んでる感じしないぞ!」
迷っていたのだ。
人生に、
ではなく、道に。
進んでも進んでも変わらない景色に方向感覚を惑わされ、密林の中をあてもなく彷徨っていた。
「おっ!!階段発見!って登りやないか〜い」
こんな風に最初にきた道にいつの間にか来ているのは何度目だろうか。
(まるで同じ所をぐるぐると回っているようだね。
ん?同じ所…そうか!!!)
「天におわす御主、迷いし美少女に道を示したまえ
まったく意味のない詠唱をしたみのり、
本人曰く、その場のノリらしい。
魔法の効果は絶大で、密林にヒビが入り、次の瞬間にはそれは跡形も無く消え去り、辺りは一変して、暗く湿っぽい通路とどんよりとした土と岩でできた景色が広がっていた。
〈なんだと…〉
〈ジャングル自体幻惑魔法ってことか?みの〉
〈みのみのみのみのみの〉
〈天才魔法少女みのみの〉
〈階層ギミックみの 階層みの自体にかけられた幻惑の魔法でありギミックみの 適切なみの魔法をかければ霧散するみの〉
〈解説助かる〉
〈いやみのウィルスに感染しててくさwwwみの〉
「ギミック解除成功〜!!
それではどんどん行ってみよー!!!!」
ガッツポーズと共に元気いっぱい声を張り上げる。
意気揚々と進むみのりは、通路の奥に消えていった。
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「そんな血まみれで睨まないでくれよ?加虐心が刺激されてイってしまいそうだ」
「ぐっ…勝手にイってろ変態やろう」
肩で大きく息をするマーク。
鎧はどこもかしこもボロボロで肌が見える箇所は血まみれだった。
力の差があるのは一目見た時から分かってはいたが、まさかこれ程までとは。
男は雷魔法とそれが付与されたレイピアを主体にして攻めてきて、その攻撃力と圧倒的な速度にマークは翻弄されっぱなしだった。
「ふ〜結構しぶといね〜君、名前聞いとこっかな、君の名は?」
「マーク・マギア・ジルヴァン」
「マギア!?そうか、君はマギアの意志を継ぐ者か、通りで、まぁ使いこなせてはないけど」
「人の名前だけ聞いといて、自分は答えないのか、お預けプレイは好きじゃないんだけどな」
「ハハハ。宵闇のクロスフィードだよ」
「中2くせぇあだ名だな」
「子供心を忘れないだけさ、そうだ、マギアと戦うにはこのスタイルじゃなきゃね。感謝してほしい。とっておきをみせてあげるよ」
そう言って男は漆黒の刀を顕現させて、
鞘から刀を水平に抜き、同時に特有の木の擦れるような音が響き、
掌を、正中線を挟み込むようにして、刀を中段に構えた。
堂に入った男の一連の仕草に目を見張るマーク。
背中には嫌な汗が流れる。
流れに、仕草に、雰囲気に、立ち振る舞いに如実に表れていた。
気づいてしまった。
このスタイルこそ、宵闇のクロスフィードの本来の姿だと。
「嫌味なやつだなてめぇは」
「好きなんだよ、人が嫌がる事をするのがね。ここからは本気でいくよ」
「受けて立ってやるよ。
高速で放たれたのは九つの炎の剣撃。
「闇に沈め
九つの剣撃が男に命中したと思いきや、男の姿は霧のように消え、次に男が目の前に現れた事を認識した瞬間、肩から斜めに脇の下へかけて斬り下げられた。
袈裟斬りにされ血の海に沈むマーク。
薄れゆく意識の中で聞いたのは刀を鞘に納める、納刀の音ではなく、姫の悲鳴ではなく、男の嘲笑ではなく、
「うわぁ、また中2フェスティバルかぁ〜」
という間抜けな少女の声だった。
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